エントリーモデルのワークステーションで、重さがたったの1.47㎏と軽いので、持ち運びが多い人に合う機種です。
11世代CPU搭載、高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたQuadro T500搭載、そしてThunderbolt 4が2つ、ストレージにはSSD PCIe 4.0も搭載可能なので、使い勝手がかなり上がっていますね。WiFi6にも対応しているし、LTE搭載モデルもあるので無線通信環境も抜群です。
Contents
ThinkPad P14s Gen 2のスペックレビュー
CPU | Intel core i5-1135G7/1145G7 Intel core i7-1165G7/1185G7 |
---|---|
メモリ | 最大48GB |
ストレージ | SSD 最大2TB |
グラフィックス | NVIDIA Quadro T500 Iris Xe |
ディスプレイ(14型) | FHD IPS液晶 光沢なし マルチタッチ・省電力あり UHD IPS液晶 光沢なし 500nit HDR |
ファクトリーカラーキャリブレーション | UHDディスプレイのみあり |
OS | Windows 10 Home、Pro |
無線 | WiFi6、Bluetooth v5.2 LTE、NFC搭載可能 |
生体認証 | 顔認証、指紋センサー搭載可能 |
Microsoft Office | Office Home &Business 2019搭載可能 |
セキュリティ | TPM、パワーオン パスワード、ハードディスク パスワード(NVMe パスワード)、スーパーバイザー パスワード、セキュリティケーブルスロット、システム マネジメント パスワードなど |
寸法 | 329x227x18.9㎜ |
重さ | 1.47㎏ |
バッテリー | 最大14.6時間 |
保証 | 1年間引き取り修理 |
価格 | 13万6125円~ |
パソコンの頭脳であるCPUはインテル11世代CPU搭載で、特にシングルコア性能が高くなっているので、レンダリングやモデリング利用時には特に快適さを感じると思います。
グラフィックボードにはNVIDIA Quadro T500が搭載、内蔵グラフィックスはIris Xeが搭載なので、快適にCADや動画・画像編集ができます。
メモリはオンボード最大16GBに、スロットに最大32GBの合計48GBが搭載可能です。モバイルワークステーションとしては、十分だと思います。
ストレージはSSD 最大2TBで、最新規格のPCIe NVMe 4.0×4もあります!Thunderbolt 4もあるので、データ移動速度は最高ですね。現時点では、これ以上望めません。
ディスプレイの種類も多く、4K画質のUHDに、フルHDディスプレイの2種類があり、フルHDはマルチタッチや、省電力パネルなどもあります。用途に合わせてディスプレイの品質をカスタマイズできるので、助かります。
ワークステーションなのでセキュリティも豊富、MILスペックに準拠した機種なので耐久性・堅牢性も高くなっています。また、ISV認証と言って、「ISV(独立系ソフトウェアベンダー)によるテストで、アプリケーションとの互換性や安定稼働、高い運用性を評価された機種」になります。
込み合った回線でも、安定した高速回線で通信がしやすいWiFi6に対応し、LTE搭載モデルもあるので、外出先で作業をすることが多い人には特に使いやすいです。
14インチはワークステーションでは小型になるので、持ち運び用として購入する方も多いと思いますが、社会人だけでなく、価格・性能的にも学生にも合う機種だと思います。
前モデルとの比較
旧モデルのThinkPad P14sとの比較です。(メモリ・SSD・バッテリーは最大値)
本機種 | ThinkPad P14s | |
CPU | Intel core i7-1185G7/1165G7 Intel core i5-1145G7/1135G7 |
Intel core i5-10210U/10310U Intel core i7-10510U/10610U |
メモリ | 最大48GB(3200MHz) | 最大48GB(3200MHz) |
ストレージ | SSD 2TB | SSD 2TB |
ディスプレイ | FHD、UHD | FHD、UHD |
GPU | Quadro T500 | Quadro P520 |
無線 | WiFi6、LTE | WiFi6、4G LTE |
バッテリー | 最大14.6時間 | 最大15.1時間 |
重量 | 1.47㎏ | 1.47㎏ |
価格 | 13.6万円~ | 14.4万円~ |
本機種は旧モデルと同じ筐体を使用しており、CPUとGPU、そしてストレージ以外は全て同じになります。CPUとGPUは旧モデルから30~50%ほど性能が上がっています。ストレージは新モデルにPCIe 4.0×4の最新SSDが選択可能で、シーケンシャル速度も50%近く上がっています。
性能は上がったけど価格が下がったので、お得になっていますね。
ライバル機種
本機種と似たような14型最新機種との比較です。(メモリ・SSD・バッテリーは最大値。スマホの方は表を右にスクロールできます)
本機種 | ThinkPad P14s AMD | ZBook Firefly 14 G8 | |
CPU | Core i7-1185G7/1165G7 Core i5-1145G7/1135G7 |
Ryzen 7 Pro 4750U | Core i7-1185G7/1165G7 |
メモリ | 48GB | 48GB | 32GB |
ストレージ | SSD 2TB | SSD 2TB | SSD 2TB |
グラフィックス | Quadro T500 | 内蔵グラフィックス | Quadro T500 |
ディスプレイ | FHD、UHD | FHD、UHD | FHD |
無線 | WiFi6、LTE | WiFi6、4G LTE | WiFi6 |
バッテリー | 14.6時間 | 15.4時間 | 14時間 |
重量 | 1.47㎏ | 1.47㎏ | 1.4㎏ |
価格 | 13.6万円~ | 10.2万円~ | 20.3万円~ |
P14s AMDは高性能のAMD Ryzen 4000シリーズ搭載ですが、グラボがないため2DCADメインの人向けですね。ZBook FireflyはLTEと4K UHDディスプレイがないですが、若干軽く、HP独自のセキュリティが多く搭載しています。
3D CADも使うし、常時インターネット接続が必要な人は本機種がおすすめです。
ThinkPad P14s Gen 2の特徴
MILスペック準拠のワークステーションなので、ちょっとベゼルが太いですが、一般的なワークステーションと言った外観です。
寸法は幅329㎜、奥行き227㎜、高さ18.9㎜となり、大学ノートA4サイズ(297㎜x210㎜)と比べると、幅+3.2㎝、奥行+1.7㎝となります。
厚さは18.9㎜と若干大きいので、筐体内部のエアフローが良いと思います。また、重さは1.47㎏と、性能が高いワークステーションにしては激軽です!(普通のPCだと標準並み)
側面から見ると、そこまで大きいという印象は無いですね。
性能が高い機種なので、エアフローを良くするために右側面にも空気口があります。
底面には、大きな吸気口があります。
MILスペック
ThinkPadでは本機種に限らず、全機種で米軍の物資調達規格のMIL-SPECに準拠しており、耐久性・堅牢性が高いのもお墨付きです。MIL規格は簡単に言うと、紛争地に持って行っても大丈夫な品質、というものですね。
12項目のMIL規格のテストに、200以上の品質テストを実施していて、落下テストや気温・気圧の変化、開閉耐久性などのテストをやっているので頑丈です。
キーボード
キーボードはJISキー(日本語配列)とUSキー(英語配列)があり、バックライト有り無しの2種類があります。
バックライト付きが暗がりで使うときに便利なので、おすすめです。
また、ThinkPadのキーボードは、「タイピングがしやすい」と有名ですよね。と言うのも、キーストローク(キーの中心から次のキーの中心までの距離)が19㎜前後で窮屈じゃないし、キーストローク(キーを押し込む距離)が1.8㎜前後と深いので、押しごたえがあるんですね。
赤いボタン(トラックポイント)は、カーソルを動かしたりズームしたりできるので、慣れると「手がホームポジションから離れずに」作業ができます。
CPU
製造プロセス | コア/スレッド キャッシュ |
グラフィックス | ベースクロック シングルコアターボ時 |
|
Core i7-1185G7 vPro対応 |
10nm SuperFin |
4/8 12MB |
Iris Xe | 3GHz 4.8GHz |
Core i7-1165G7 | 10nm SuperFin |
4/8 12MB |
Iris Xe | 2.8GHz 4.7GHz |
Core i5-1145G7 vPro対応 |
10nm SuperFin |
4/8 8MB |
Iris Xe | 2.6GHz 4.4GHz |
Core i5-1135G7 | 10nm SuperFin |
4/8 8MB |
Iris Xe | 2.4GHz 4.2GHz |
vPro・・・企業の情報システム部門など、システム管理に携わる人向けの機能になります。詳しくは「Intel vProプラットフォーム」をどうぞ。
CPUには最新のインテル第11世代CPUが搭載で、今まで以上にレンダリングやモデリングが快適に処理できるようになっています。
Passmarkスコアの目安
- 2000~・ネットサーフィンでもストレスを感じるほど
- 5000~・web閲覧・動画視聴・Office資料作成があまりストレスなくできる
- 7000~・ビジネス用途でがっつり使ってもストレスを感じることはほぼ無い
- 10000~・ゲーミングPCなど専門的な機種に搭載されることが多い
(グラフをタップすると数値が表示されます)
[visualizer id=”18911″ lazy=”no” class=””]全てのCPUは1万以上と高いスコアになっています。
こちらは、Cinebench R23のスコアです。マルチコアとシングルコアの性能を数値化したものです。
[visualizer id=”17382″ lazy=”no” class=””]マルチコアの性能はRyzen 7やCore i7-10750Hの方が高い数値ですが、シングルコアは11世代CPUがダントツですね。CADなどモデリングでの、シングルコア性能が必要なソフトが使いやすくなっています。
こちらはCore i7-1185G7と、このクラス最高性能を持つAMD Ryzen 7 4800Uとの比較で、エクセルは1.3倍、Wordは1.38倍、クリエイターソフトのPhotoshopは1.4倍、動画編集ソフトのAdobe Premiere Proに至っては2.7倍、WiFi6の速度も最大3倍速いとのことです。(GPUにIris Xe使用時)
11世代CPUは、単純な数値では比較できない快適さがあるようです。
グラフィックス
NVIDIA Quadro T500(Mobile) | |
CUDAコア | 896 |
ベースクロック | 1365MHz |
ブーストクロック | 1695MHz |
メモリ帯域 | 80Gbps |
メモリタイプ | GDDR6 |
メモリ容量 | 4GB |
TGP | 18~25W |
API | Shader Model 5.1、OpenGL 4.6、DirectX 12.1 |
内蔵グラフィックスには超高性能のIris Xeが、外部グラフィックボードにはNVIDIA Quadro T500が搭載です。
グラフィックボードは、DirectX(3Dゲーム)に最適化されたGeForceじゃなく、高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたQuadroで、発色が良く、CAD等を使う設計・建築、メディアクリエイターの業務用グラフィックボードです。
旧モデル・P14s Gen 1に搭載されていたQuadro P520よりも、CUDAコアが2.3倍ほど多くなり、VRAMも4GBあるので使いやすくなっています。
ディスプレイ
解像度 | 光沢 | 液晶 | 輝度 | コントラスト比 | 色域 | その他 |
UHD 3840×2160 |
なし | IPS | 500nit | 1500:1 | DCI-P3 100% | カラーキャリブレーション HDR |
FHD 1920×1080 |
無し | IPS | 300nit | 700:1 | NTSC 45% | マルチタッチ |
FHD 1920×1080 |
無し | IPS | 400nit | 800:1 | NTSC 72% | 省電力パネル |
FHD 1920×1080 |
無し | IPS | 500nit | 1000:1 | NTSC 72% | マルチタッチ・Privacy Guard |
FHD 1920×1080 |
無し | IPS | 300nit | 700:1 | NTSC 45% | ― |
UHD | ウルトラ・ハイディフィニション、いわゆる4K画質 | |||||
FHD | フル・ハイディフィニション、一般的な画質 | |||||
光沢 | 光沢ありは発色が良い反面、自分や背景が映り込みしやすい。光沢無しは映り込みがしにくい | |||||
IPS液晶 | コントラスト比が高く、視野角も広い | |||||
nit | 明るさを表す単位。通常250nitが標準 | |||||
DCI-P3 | アメリカの映画製作業界団体が策定した色空間の規格で、映画撮影に使われるカラーフィルムの色域に対応した高色域の規格 |
|||||
HDR | ハイダイナミック・レンジの略で、黒つぶれ、白飛びなどが無く、より本来の色を表現できる。 | |||||
Dolby Vision | Dolby独自の規格。最大輝度を高め、より大きなコントラストに滑らかなグラデーション、そして高い色域を表現できる | |||||
Privacy Guard | 輝度を下げ、視野角を狭くして背後からののぞき見を防止する機能 | |||||
カラーキャリブレーション | カラーキャリブレーションとは通常200~300時間ごとにやる「色を正確に再現するための調整」ですが、工場出荷時の状態に戻せる機能 |
本機種はディスプレイの色域が数種類あるので、補足しておきます。
DCI-P3は動画・映画編集に向いている高色域で、より正確な色を描写できます。NTSC 72%はsRGB 100%相当で、Web用画像編集に向いている色域が描写されます。本機種にはないですが、Adobe RGBはプリントアウトなどの製版向けの色域になります。NTSC 45%は、一般的なノートパソコンに搭載されるディスプレイの色域です。
上の図の三角形が大きければ大きいほど、「現実世界の色」と近い色が描写されるディスプレイになります。
ディスプレイ選びは、「どこまで正確な色を見ながら編集したいか」によりますが、鮮やかな色が表現できるNTSC 72%(sRGB 100%)以上がおすすめです。
<色域の例>
メモリ
メモリはパソコンの作業台で、より大きなメモリは、より大きなデータが扱いやすくなり、処理も速くなります。また、本機種搭載メモリはPC4-25600(DDR4-3200MHz)と、最高の動作周波数(MHz)があるので、処理速度は速いです。
メモリはオンボード最大16GBに、スロットが1つあり、最大32GBの合計48GB搭載可能です。
通常メモリは2枚1組で使うので、16GB+16GBの組み合わせが良いですが、48GBは結構大きいので悩ましいですね。
ストレージ
ストレージはSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)で、ストレージはデータを保存するだけの場所じゃなく、パソコンの起動などにも関わる重要なパーツです。
SSD PCIe NVMe | HDD | |
最大データ転送速度 | 16Gbps~32Gbps | 6Gbps(SATA) |
平均起動時間 | 10秒~15秒 | 30秒~2分(新品の場合) |
温度 | 熱くなりにくい | 熱くなりやすい |
価格 | 高い | 安い |
本機種には2種類のSSDがあり、
- 256GB~1TB・・・PCIe NVMe 3.0
- 2TB・・・PCIe NVMe 4.0
が搭載です。4.0×4はメモリ帯域が3.0の倍になっているので大きなデータ移動がやりやすくなっています。(それでも、3.0でもかなり速いですが)
また、全てのSSDにはOPALと言う「自己暗号化ドライブ機能」が付いているので、ハードウェアレベルでデータを暗号化することができます。
バッテリー
バッテリーは3セル・50Whで、駆動時間は比較的長い14.6時間になります。負荷のかかる作業をやると時間は短くなるので、充電アダプターやモバイルバッテリーの持ち運びが必要な人も出てくると思います。
セキュリティ
- Windows Defender・・・Windows搭載のセキュリティ機能で、マルウェアなどのウイルスからパソコンを守ってくれます。
- TPM・・・独立して機能するチップで、パスワードなどの重要情報を格納できる
- ハードディスクパスワード・・・ハードウェアレベルでパスワードを設定できるので、パソコン内部のデータが盗み見られる可能性がかなり減ります
- セキュリティケーブルスロット・・・パソコンが持ち出されないようにロックするワイヤー設置する個所
WiFi6
次世代通信規格のWiFi6は、旧規格のWiFi5よりも同時により多くのデバイスに電波を飛ばすことができ、最大通信速度もWiFi5より約40%速くなっているので、無線通信でも快適に作業ができるようになっています。
LTE
本機種はLTEも搭載可能で、nanoSIMを入れて常時ネット回線に繋げることが出来ます。WWANという項目から追加が出来ますが、LTE搭載モデルは2021年4月上旬からの販売になっているので、今現在、詳細が明らかになっていません。
ただし、仕様書によるとeSIM対応みたいなので、LTE搭載モデルが販売されたら情報をアップデートします。
インターフェイス
右側面インターフェイスには、USB 3.2 Gen 1(最大データ転送速度5Gbps)、RJ45(LANケーブルポート)、セキュリティロックケーブル用スロットがあります。
右側面インターフェイスには、USB-C(Thunderbolt 4×2)、ドッキングコネクタ(USB-C2つと併用)、USB 3.2 Gen 1、HDMI、マイク/ヘッドフォンジャック、microSDカードリーダーがあります。
新規格のThunderbolt 4は、以下のような特徴があります。
- Power delivery対応、DisplayPort出力機能付き、DC-in機能付き(充電できるという意味)
- 最大データ転送速度40GB/秒が2mのケーブルでも出る(以前は0.8mまで)
- PCIeの転送速度は32GB、ストレージ転送速度は最大3000Mbps
- 4Kディスプレイ2台同時に出力可能
- 8K出力にも対応
- USB4.0規格に準拠
サポート・保証
本機種は1年間引き取り修理保証(Depot Support)と、標準サポート(電話・チャット・メール・LINE)が付いており、サポートは朝9時から夕方6時までになります。引き取り修理とは、万が一の際にLenovo指定業者が引き取りに来て、リペアセンターに配送、修理後、郵送してくれるサービスで、保証期間内は郵送費などは無料です。
保証とサポートは以下のものにアップグレードできます。
- オンサイト修理保証・・・エンジニアが指定住所に来て現地で修理
- 翌営業日オンサイト修理・・・通常、翌営業日にエンジニアが指定住所に来て修理
- プレミアサポート・・・専任エージェントが24時間365日対応。一般のコールセンターとは別のコールセンターで対応
まとめ
14型のワークステーションはあまり数が多くなく、スペックも控えめの機種が多いですが、本機種はまともな作業ができるくらいの性能はありますね。
11世代CPUは性能が高く、特にシングルコアは10世代CPU上位モデルのHシリーズよりも高いので、専門的な作業がやりやすくなっています。
ディスプレイも種類が多いので、用途に合わせて必要なものを選ぶことができるし、色域も高いものがあるので本格的な作業もできます。
ワークステーションとしては低価格モデルですが、使用されている(もしくは搭載可能な)パーツの品質は高く、大きなデータも扱いやすいですね。