本機種は企業向け、もしくはプロ向けのスペックで、電算や動画・画像編集、3DCAD、科学技術計算、仮想マシン(VR)製作者やVRヘビーユーザー向けのワークステーションです。
Xeon搭載のデュアルプロッセサー(CPUを2つ搭載)なので単純に2倍の性能があり、かなりパワフルだし、グラフィックボードも複数枚搭載できます。
Lenovo史上最高のスペックで、セキュリティも万全、サポートもプレミアサポート、翌営業日オンサイト修理など全体的に欠点のない機種になります。
Contents
ThinkStation P920のスペックレビュー
CPU | Intel Xeon Silver x2(2つ搭載) Intel Xeon Gold x2(2つ搭載) Intel Xeon Platinum x2(2つ搭載) |
---|---|
メモリ | ECCメモリ 最大1024GB |
ストレージ | M.2スロット<9xM.2 SSD(オンボードx2,PCIex x7)> ドライブベイ<4×3.5 HDD/SSD> Flexベイ<2×2.5インチHDD/SSD> |
チップセット | インテル C621 |
OS | Windows 10 Pro for Workstations |
グラフィックス (複数搭載可能) |
NVIDIA Quadro P400/600/620/1000/2200/ NVIDIA Quadro RTX /4000/5000/6000/8000 NVIDIA Quadro GV100 |
RAID | RAID0、1、5、10 |
光学ドライブ | スリムDVD-ROM スリムDVDスーパーマルチドライブ スリムBue-Ray |
無線 | AC 8265、Bluetooth 4.1(搭載可能) |
有線(イーサネット) | イーサネットアダプター |
セキュリティ | シャーシ イントルージョン スイッチ、TPM、パワーオン・パスワード、ハードディスク・パスワード、アドミニストレーター・パスワード、USBロック(BIOS)、kensingtonロック、パッドロック、シャーシキーロック |
寸法(幅x奥行x高さ) | 200x620x440㎜ |
重さ | 最大31㎏(最大) |
保証 | 3年間オンサイト |
電源 | 最大1400W 80PLUS Platinum(日本では1125Wで作動) |
付属 | キーボード、マウス(取り消し可能) |
価格 | 29万円~ |
スペック的には基本的にThinkStation P720とほぼ同じですが、筐体がより大きいのでより多くのベイがあり、ストレージやメモリがより大容量搭載可能、電源が1400Wと大きくなっています。
スペック的には申し分ないというか、これ以上望むことはできないんじゃないかな?と言ったレベルですね。
必要なものだけ付けて、後は増設すれば安く済みますが(安くといっても5~60万くらい)、必要なものすべて搭載して購入するとウン百万円くらいになると思います。
仕様書には、CPUはIntel XeonのGOLD,SILVER,PLATINUMが搭載できるとのことですが、最新モデルではGOLDとSILVERのみになっています。Xeonはレンダリングも速いし、利用できるメモリも多いし、コア数も多いですね。
XeonはCoreシリーズに比べビデオエンコーダーや大規模シュミレーションなどCPUの性能をフルに使う処理に有利で、クラスタリングなどする時もマルチプロセッサーの方が効率が良いので、Xeonが2枚搭載されている本機種は最強のCPUスペックです。
当然、メモリにはECCメモリ搭載で、最大で1TB(1024GB)搭載できます。XeonとECCメモリは業務用サーバーやワークステーションに特化した組み合わせで、「データの破損」が絶対に許されないような金融機関、科学技術計算、サーバー業務などに使用する機種に搭載されます。
ストレージは3.5インチベイが最大4つ、2.5インチベイが最大8つ、オンボードでSSD最大4TB(2TB+2TB)、AIC M.2が最大6TB(2TBx3)が搭載できます。最大構成で40TBくらいになります。
グラフィックボードは最大で5枚(Quadro P400のみ)搭載でき、上位モデルのQuadro RTX 8000は2枚、その他は3枚~4枚搭載できます。最高性能ですね。
もちろん、DirectX(3Dゲーム)に最適化されたGeForceじゃなく、高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたQuadroが搭載なので映像編集にも向いています。
ちなみにQuadroじゃないと10bit(約10億7374万色)対応じゃないと書いているサイトも見かけますが、GeForceでも10bitに対応しているモデルが殆どです。
光学ドライブは最大3台まで搭載できるので、ドライブtoドライブで焼くことも出来るし、同時に読み込むこともできます。
また、保証は3年間の翌営業日オンサイト修理で、「オンサイト」とは技術員が出張修理を行う保証になります。不具合があった場合、Lenovoにわざわざ本体を送らなくてもこっちまで来てくれて、修理してくれます。
Houdini ApprenticeやPOV-RayなどのCGレンダリングや科学技術計算、沢山の動画を一括バッチ処理するなどのプロの動画編集者、仮想マシンを使う人など、メインメモリを大量に消費する処理やCPUコアが要求される処理をする人向けになります。
ThinkStation P920の特徴
<モニターは別売り>
重厚な見た目でごついですね。
筐体は55Lで、寸法は幅200㎜、奥行き620㎜、高さ440㎜になります。
- 幅は、はがきの短辺(100㎜)x2枚
- 奥行きは、千円札の長辺(150㎜)x4枚
- 高さは千円札の長辺(150㎜)x3枚
と、ほぼ同じくらいです。特に奥行きが大きいですね。これだけ大きいので、より多くのベイを搭載しているし、エアフローも良くなっています。
前面はメッシュ状になっており、大きなサイズの吸気口です。
筐体内部にアクセスはしやすく、各パーツはモジュラー化されたパーツとしてツールレス(工具無し)で取り付け・取り外しができます。増設や取り換えなどの時に扱う場所が一目で分かるように、赤い線が所々に入っています。
変なところを触ってしまわないし、間違えにくいです。
メモリは最大16枚、グラフィックボードは種類によりますが2枚~5枚、ストレージも2.5インチベイが最大8つ、3.5インチベイが4つと大容量にできます。光学ドライブも最大3つ搭載できます。
前面インターフェイスは
- 9 in 1メディアカードリーダー・USB 3.0×4つ・コンボジャック・マイク入力/ライン入力・ライン出力
背面には
- USB 3.0×4つ、USB 2.0×2つ、RJ45(LANポート)、PS/2端子(マウス・キーボード)
があります。USB-CのThunderboltも搭載できるので、ご心配なく。
また、各グラフィックボードに以下のインターフェイスがあります。赤文字のグラフィックボードは、執筆時現在(2020年12月2日)搭載できません。
インターフェイス | 最大搭載数 | |
P400 | mini Display Port x 3 | 5 |
P600 | mini Display Port x 4 | 4 |
P620 | mini Display Port x 4 | 4 |
P1000 | mini Display Port x 4 | 4 |
P2000 | Display Port x 4 | 4 |
P2200 | Display Port x 4 | 5 |
P4000 | Display Port x 4 | 4 |
P5000 | Display Port x 4, DVI-D DL | 3 |
P6000 | Display Port x 4, DVI-D DL | 3 |
RTX 4000 | Display Portx3, VirtualLink | 3 |
RTX 5000 | Display Portx4,VirtualLink | 3 |
RTX 6000 | Display Portx4,VirtualLink | 2 |
RTX 8000 | Display Portx4,VirtualLink | 2 |
GV100 | Display Port x 4 | 3 |
注)VirtualLinkとは、VRに使うヘッドセットを1本のコネクタで接続できる入出力です。
注)DVI-DとはDigital Visual Interfaceで、デジタル信号を出力できる端子で、データの劣化がありません
グラフィックス
通常のパソコンにはグラフィックボードにGeForce(3Dゲーム/DirectXに最適化)が使われますが、本機種ではQuadro(CADなどの専門的な高度な技術計算/OpenGLに最適化)が搭載です。
↓右にスクロールできます↓
Quadro | P400 | P620 | P1000 | P2200 |
GPUアーキテクチャ | Turing | Turing | Turing | Turing |
CUDAコア | 256 | 512 | 640 | 1280 |
Tensorコア | – | – | – | – |
RTコア | – | – | – | – |
メモリ帯域 | 32Gbps | 80Gbps | 82Gbps | 200Gbps |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5X |
メモリ容量 | 2GB | 2GB | 4GB | 5GB |
単精度性能 | 0.641TFLOPS | 1.38TFLOPS | 1.89TFLOPS | 3.8TFLOPS |
Tensor core性能 | – | – | – | – |
NVLink SLI | – | ー | ー | ー |
API | Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
TDP | 30W | 40W | 47W | 75W |
Quadro | RTX 4000 | RTX 5000 | RTX 6000 | RTX 8000 | GV100 |
GPUアーキテクチャ | Turing | Turing | Turing | Turing | Volta |
CUDAコア | 2304 | 3072 | 4608 | 4608 | 5120 |
Tensorコア | 288 | 384 | 576 | 576 | 640 |
RTコア | 36 | 48 | 72 | 72 | ー |
メモリ帯域 | 416Gbps | 448Gbps | 672Gbps | 672Gbps | 870Gbps |
メモリタイプ | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | HBM2 |
メモリ容量 | 8GB | 16GB | 24GB | 48GB | 32GB |
単精度性能 | 7.1TFLOPS | 11.2TFLOPS | 16.3TFLOPS | 16.3TFLOPS | 14.8TFLOPS |
Tensor core性能 | 57.0TFLOPS | 89.2TFLOPS | 130.5TFLOPS | 130.5TFLOPS | 118.5TFLOPS |
NVLink SLI | ー | NVLink | NVLink | NVLink | NVLink |
API | Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
TDP | 160W | 265W | 295W | 295W | 250W |
- TFLOPS・・・単精度浮動小数点演算性能で、RTX 4000の57TFLOPSだと、32bit小数の乗算、または加算を1秒間に57兆回実行できる速度
- NVLink・・・NVIDIAの2つの同じグラフィックボードを繋げて理論的に2倍の性能に引き上げることができるマルチGPU技術。接続にNVLink SLI Bridgeが必要
このクラスのワークステーションだと用途によってどのグラボを決めるかになりますが、本機種は複数枚のグラボが搭載できます。例えばですが、Quadro P400を4枚搭載するよりもハイエンドモデルのQuadro RTX 5000を1枚使う方がいいです。
なので、1枚搭載するならRTXシリーズ、複数枚搭載でもRTXシリーズがいいかなと思います。
ISV認証
ISV(独立系ソフトウェアベンダー)により、アプリケーションとの互換性や安定稼働、高い運用性をテストされてISV認証を取得しているので、安心して使えます。
英語版のみですが、Lenovoのサイトでどのベンダーのどのソフトと互換性があるか確認が出来ます。例えば下の画像は本機種「ThinkStation P920」「Autodesk」「Autodesk Alias 2019」で検索した結果です。
結果は「Certified(認証済み)」や「Recommended(推奨)」などでてきます。ほとんどのソフトは認証済みですが、利用者が少ない・マイナーなソフトを使っている場合は、確認してから購入した方がいいかと思います。
CPU
CPUは、2020年11月2日リリースの最新版に搭載できるもののみご紹介します。仕様書には30以上のCPUが選択できると記載されているので、下記しているもの以外があればこちらでご確認ください。
Xeon Silver | 4208 | 4210/4210R | 4214/4214R |
製造プロセス | 14nm | 14nm | 14nm |
コア/スレッド | 8/16 | 10/20 | 12/24 |
ベースクロック | 2,1GHz | 2,2GHz/2.4GHz | 2,2GHz/2,4GHz |
ブーストクロック | 3,2GHz | 3,2GHz | 3,2GHz/3,5GHz |
キャッシュ | 11MB | 13.75MB | 16,5MB |
TDP | 85W | 85W/100W | 85W/100W |
Xeon Gold | 5218 | 5222 | 6226 | 6230 |
製造プロセス | 14nm | 14nm | 14nm | 14nm |
コア/スレッド | 16/32 | 4/8 | 12/24 | 20/40 |
ベースクロック | 2,3GHz | 3,8GHz | 2,7GHz | 2,1GHz |
ブーストクロック | 3,9GHz | 3,9GHz | 3,7GHz | 3,9GHz |
キャッシュ | 22MB | 16,5MB | 19,25MB | 27,5MB |
TDP | 125W | 105W | 125W | 125W |
こちらは、CPUの性能を表すPassmarkスコアの比較で、青が本機種搭載CPUです。タップすると数値が表示されます。
[visualizer id=”15655″ lazy=”no” class=””]Xeon GOLD 5222以外は全てスコア1万以上なので、5222以外を選択したいですね。しかも5222のみ4コア8スレッドと、Xeonにしては低性能です。
メモリ
メモリはDDR4-2933MHz ECCで、スロットは16個、最大1024GB搭載できます。
ECCメモリとは、メモリ上で発生した1ビットエラーの検出に対して訂正が可能なメモリで、「データの破損」が絶対に許されないような金融機関、科学技術計算、サーバー業務などに使用するパソコンに搭載されます。
ちなみにメモリは2933MHzですが、CPUによって最大周波数が違うので最大2933MHzでの動作になります。(動作周波数が高いと処理速度が速いです)
- 2933MHz・・・Xeon Gold 5222,6226,6230
- 2666MHz・・・Xeon Gold 5218
- 2400MHz・・・Xeon Silver
ストレージ
ストレージは2.5インチベイが最大8つ、3.5インチベイが4つ搭載でき、オンボードで最大約5TBのSSD、AIC M.2が6TBも搭載できます。
最大データ転送速度は、この様になります。
- SSD SATA/HDD SATA・・・6GB/秒
- SSD PCIe NVMe PCIe 3.0×4・・・32GB/秒
OptaneメモリやOPAL搭載モデルもあるので、購入時に確認してみてください。
- OPAL・・・自己暗号化ドライブで、ハードウェアレベルでデータを暗号化
- Optaneメモリ・・・データをキャッシュ(記憶)して表示するので、よく使用するアプリやページ等は超高速表示が可能
RAID設定
本機種では、RAID 0, 1 , 5, 10の設定ができます。
- RAID 0・・・読み込み書き込みが高速で出来るし、分散してデータを保存ができる反面、1つのストレージに障害が発生すると復旧できません。なので、RAID 1やRAID 5と組み合わせて使うことが多いです。
- RAID 1・・・読み書きが遅いが、複数のストレージに「同じデータを書き込む」ので、1つのストレージに障害があってももう一つの方のデータを使って作業が出来ます。
- RAID 5・・・ドライブが3台以上必要で、データからパリティ(誤り訂正符号)を作成し、3台以上のハードディスクに分散して書き込み。分散書き込みなので速度も速く、1つのHDDに問題が発生しても残りのHDDから作業が可能。多くの人はこの設定を利用
- RAID 10・・・ドライブが4台以上必要で、RAID 0とRAID 1を組み合わせた構成。多くの人はこの設定を利用
セキュリティ
- Windows Defender・・・Windows搭載のセキュリティ機能で、マルウェアなどのウイルスからパソコンを守ってくれます。
- TPM・・・独立して機能するチップで、パスワードなどの重要情報を格納できる
- ハードディスクパスワード・・・ハードウェアレベルでパスワードを設定できるので、パソコン内部のデータが盗み見られる可能性がかなり減ります
- Kensingtonロック・・・パソコンが持ち出されないようにロックするワイヤー設置する個所
- USBロック・・・USBポートを外部USBデバイスからロックする。パスワードを入れて解除できます。
- OPAL・・・自己暗号化ドライブ。データが流出した時など、暗号化されているので解読されにくいという特徴があります。
- シャーシ イントルージョン スイッチ・・・筐体へのアクセスを記録できる(誰かが勝手に開けて内部を触っても分かる)
主なものを記載しましたが、多くのセキュリティが搭載しているので、企業でも安心して使えます。特に、シャーシインストルージョンスイッチは、仮に従業員などの内部の者が筐体に不正を働いてもBIOSが記憶して、次回起動時に警告を出すので鉄壁の防御ですね。
保証
保証は3年間翌営業日オンサイト修理(出張修理)なので、万が一の時はかなり助かりますね。本体をLenovoに送らなくていいので、面倒もありません。次の日の修理の人が来るのを待つだけです。
保証は標準で3年ですが、5年まで延長できます。
また、サポートも一般のサポートと違いプレミアサポートと言って、専用コールセンター(24時間365日!)にて専任エージェントがサポートしてくれるので、困ったときはプロに電話して聞くことが出来ます。
最後に
スペック・サポート・修理保証などどれをとっても最高の品質で、大きな電源に大きなメモリやストレージと、これ以上は望めないくらいの性能です。
自分でカスタマイズもしやすいので、個人でも購入しやすい価格で買うことが出来ます。
特にサポートはすごく良いので、個人でも企業でも安心して使うことが出来ます。