本機種は企業向け、もしくはプロ向けのスペックで、動画・画像編集、3DCAD、科学技術計算、仮想マシン(VR)製作者やVRヘビーユーザー向けのワークステーションです。
当然、「最高の性能のパソコンが欲しい」という個人にも合う機種で、AMD Ryzen Threadripper ProのプロセッサーにNVIDIA Quadro RTX 8000も搭載できる最高峰スペックです。
大量のCGレンダリングや、1秒でも早く快適に作業をしたい人、研究室での利用など、様々な場所で活躍する機種です。
Contents
ThinkStation P620のレビュー
CPU | AMD Threadripper Pro 3945WX/3955WX/3975WX/3995WX |
---|---|
メモリ | 最大512GB ECC |
ストレージ | 最大3.5インチHDDx5、最大M.2 SSDx11 |
チップセット | AMD WRX80 |
マザーボード | AMD Ryzen Threadripper Pro 3000シリーズ |
OS | Windows 10 Pro |
グラフィックス | NVIDIA Quadro P620/1000/2200 NVIDIA Quadro RTX /4000/5000/6000/8000 AMD Radeon Pro W5500/W5700/WX3200 |
RAID | RAID0、1、5、10 |
光学ドライブ | ウルトラスリムDVD-ROM ウルトラスリムDVDスーパーマルチドライブ ウルトラスリムBue-Ray |
無線 | AC 9260 2×2、Bluetooth 5.1 |
有線(イーサネット) | 内蔵イーサネット 10ギガビット イーサネット |
セキュリティ | Windows Defender、TPM、パワーオン パスワード、ハードディスク パスワード、セキュリティケーブルスロット、パッドロック |
寸法(幅x奥行x高さ) | 165x460x446㎜ |
重さ | 最大24㎏ |
保証 | 3年間オンサイト |
電源 | 1000W 80PLUS Platinum |
価格 | 30.2万円~ |
やばいですね、このスペック。構成具合によっては、値段は青天井です。カスタマイズしたら、RTX 8000搭載モデルなんかは300万円くらいになりました。
APUはあのAMD Ryzen Threadripper Proで、最大64コア128スレッドのモンスタープロセッサーです。将棋の藤井棋士がRyzen Threadripperを使っていると言って、一時期有名になりましたね。
コンシューマー向けのプロセッサーでは最大のコア/スレッド数になるプロセッサーで、Houdini ApprenticeやPOV-RayなどのCGレンダリングや科学技術計算、沢山の動画を一括バッチ処理するなどのプロの動画編集者、仮想マシンを使う人など、メインメモリを大量に消費する処理やCPUコアが要求される処理をする人向けになります。
メモリは最速3200MHz DDR4で、8スロットあります。最大で512GBのメモリが搭載できるので、まず問題ないと思います。
ストレージベイも多く、最大で3.5インチHDDx5、最大M.2 SSDx11ものストレージが搭載できます。
グラフィックスはNVIDIA Quadroシリーズと、AMD Radeon Proから選べ、個人利用のスペックから企業もしくは本格派プロ向けのスペックまであります。
また、保証は3年間のオンサイトで、「オンサイト」とは技術員が出張修理を行う保証になります。不具合があった場合、Lenovoにわざわざ本体を送らなくてもこっちまで来てくれて、修理してくれます。
ThinkStation P620の特徴
重厚な見た目のワークステーションですね。シンプルでかっこいいです。幅はそこまで大きくないですが、奥行きと高さがあり、スリムに見えるけど大きいです。
幅165㎜、奥行き460㎜、そして高さが446㎜となります。
- 幅は1万円札の長辺(160㎜)とほぼ同じ
- 奥行きと高さは千円札3枚分(450㎜)とほぼ同じ
デスクが大きければ置けますが、サイズ的に足元に置くタイプですね。重量も最大24㎏もあるので。
右側面はいたって普通ですが、左側面に筐体内部にアクセスしやすい様に取っ手があるので、ここを開けてカスタマイズやメンテナンスなどがしやすいです。
内部は広々としており、裏配線なのできれいにまとまっていますね。配線がエアフロ―を邪魔しない、最高の形です。自分じゃここまで出来ませんね。
メモリスロットは8つ、グラボも最大4つ搭載でき、ストレージは最大で3.5インチHDDx5、最大M.2 SSDx11も搭載できます。
インターフェイス
電源 1. コンボジャック 2. USB3.1 Type-A Gen2 3. USB3.1 Type-C Gen2 |
4. ライン入力 5. ライン出力 6. マイク入力 7. PS/2×2 8. USB Type-A 2.0×2 9. USB Type-A 3.1 Gen2×4 10. 10GbE RJ-45×1 11. 電源コネクター |
また、各グラフィックボードに以下のインターフェイスがあります。
AMD Radeon Pro | インターフェイス | 最大搭載数 |
WX 3200 | mini Display Port x 4 | 4 |
W5500 | Display Port x 4 | 2 |
W5700 | mini Display Port x 5, USB Type-C x 1 | 2 |
NVIDIA | ||
P620 | mini Display Port x 4 | 4 |
P1000 | mini Display Port x 4 | 4 |
P2200 | Display Port x 4 | 4 |
RTX 4000 | Display Portx3, VirtualLink | 4 |
RTX 5000 | Display Portx4,VirtualLink | 2 |
RTX 6000 | Display Portx4,VirtualLink | 2 |
RTX 8000 | Display Portx4,VirtualLink | 2 |
注)VirtualLinkとは、VRに使うヘッドセットを1本のコネクタで接続できる入出力です。
RTXシリーズはVR Readyという「VRを使えるスペックがあるグラフィックボードもしくはパソコンに認証される認定マーク」あり、VRを使った事をする人は必ずRTXシリーズを選びましょう。
グラフィックス
通常のパソコンにはグラフィックボードにGeForce(3Dゲーム/DirectXに最適化)が使われますが、本機種ではQuadro(CADなどの専門的な高度な技術計算/OpenGLに最適化)が搭載です。
↓右にスクロールできます↓
Quadro | P620 | P1000 | P2200 | RTX 4000 | RTX 5000 | RTX 6000 | RTX 8000 |
GPUアーキテクチャ | Turing | Turing | Turing | Turing | Turing | ||
CUDAコア | 512 | 640 | 1280 | 2304 | 3072 | 4608 | 4608 |
Tensorコア | – | – | – | 288 | 384 | 576 | 576 |
RTコア | – | – | – | 36 | 48 | 72 | 72 |
メモリ帯域 | 80Gbps | 82Gbps | 200Gbps | 416Gbps | 448Gbps | 672Gbps | 672Gbps |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5X | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ容量 | 2GB | 4GB | 5GB | 8GB | 16GB | 24GB | 48GB |
単精度性能 | 1.38TFLOPS | 1.89TFLOPS | 3.8TFLOPS | 7.1TFLOPS | 11.2TFLOPS | 16.3TFLOPS | 16.3TFLOPS |
Tensor core性能 | – | – | – | 57.0TFLOPS | 89.2TFLOPS | 130.5TFLOPS | 130.5TFLOPS |
NVLink SLI | ー | ー | ー | ー | 対応 | 対応 | 対応 |
API | Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
Shader 5.1 OpenGL 4.6 DirectX 12 Vulkan 1.1 |
TDP | 40W | 47W | 75W | 160W | 265W | 295W | 295W |
- TFLOPS・・・単精度浮動小数点演算性能で、RTX 4000の57TFLOPSだと、32bit小数の乗算、または加算を1秒間に57兆回実行できる速度
- NVLink・・・NVIDIAの2つの同じグラフィックボードを繋げて理論的に2倍の性能に引き上げることができるマルチGPU技術。接続にNVLink SLI Bridgeが必要
目安として、3DCADを最低限動かすにはメモリ容量が2GB以上なので、どれを選んでも動きますが、8GB以上が推奨です。大規模な商業施設などを作る人は、RTX 5000は搭載したいですね。
AMD Radeon Pro | WX3200 | W5500 | W5700 |
GPUアーキテクチャ | Polaris | RDNA | RDNA |
ストリーミングプロセッサー | 640 | 1408 | 2304 |
メモリ帯域 | 96Gbps | 224Gbps | 448Gbps |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR6 | GDDR6 |
メモリ容量 | 4GB | 8GB | 8GB |
単精度性能 | 1.66TFLOPS | 5.35TFLOPS | 8.89TFLOPS |
API | DirectX 12 OpenGL 4.6 Open CL 2.0 Vulkan 1.1 |
DirectX 12 OpenGL 4.6 Open CL 2.0 Vulkan 1.1 |
DirectX 12 OpenGL 4.6 Open CL 2.0 Vulkan 1.1 |
TBP | 50W | 125W | 205W |
Radeonは比較的消費電力も低く性能も高めです。
グラボを選ぶ分かりやすい目安として「メモリ容量」がありますが、AMDは同じメモリ容量でもNVIDIAの半額ほどになっています。
プロセッサーもAMDなのでAMDのグラボがいいかなと思います。
ISV認証
ISV(独立系ソフトウェアベンダー)により、アプリケーションとの互換性や安定稼働、高い運用性をテストされてISV認証を取得しているので、安心して使えます。
英語版のみですが、Lenovoのサイトでどのベンダーのどのソフトと互換性があるか確認が出来ます。例えば下の画像は本機種「P620」「Autodesk」「Autodesk Alias(工業デザイン用ソフト)」で検索した結果です。
結果は「Certified(認証済み)」や「Recommended(推奨)」などでてきます。ほとんどのソフトは認証済みですが、利用者が少ない・マイナーなソフトを使っている場合は、確認してから購入した方がいいと思います。
また、AMDのグラフィックボードは表示されません。AMDのグラボを選ぶ際は、お使いのソフトの動作環境を確認してから購入してください。
CPU
Threadripper Pro 3945WX | Threadripper Pro 3955WX | Threadripper Pro 3975WX | Threadripper Pro 3995WX | |
アーキテクチャ | ZEN 2 | ZEN 2 | ZEN 2 | ZEN 2 |
製造プロセス | TSMC 7nm FinFET | TSMC 7nm FinFET | TSMC 7nm FinFET | TSMC 7nm FinFET |
コア/スレッド | 12/24 | 16/32 | 32/64 | 64/128 |
ベースクロック | 4.0GHz | 3.9GHz | 3.5GHz | 2.7GHz |
ターボブースト時 | 4.3GHz | 4.3GHz | 4.2GHz | 4.2GHz |
TDP | 280W | 280W | 280W | 280W |
下のグラフはプロセッサーの性能を表すPASSMARKスコアで、一番下のCore i3-10100はハイスペックなCPUです。
[visualizer id=”14916″ lazy=”no” class=””]Threadripperは次元が違うのが分かると思いますが、まぁ、どれを選んでも快適に使えることは間違いなしです。後は、予算によると思います。
メモリ
メモリはECC PC4-25600(DDR4 3200MHz)で、ソケットは8つあり、最大512GB搭載できます。
しかも動作周波数はかなり高い3200MHzなので、データ処理速度もかなり早いです。
ECCメモリとは簡単に言うと、メモリ上で発生した1ビットエラーの検出に対して訂正が可能なメモリです。
Xeon+ECCメモリは、業務用サーバーやワークステーションに特化した組み合わせで、「データの破損」が絶対に許されないような金融機関、科学技術計算、サーバー業務などに使用する場合に選びます。
ストレージ
仕様書には最大で3.5インチHDDx5、最大M.2 SSDx11となっています。
- HDDはSATA接続で、最大データ転送速度は6GB/秒
- SSDはM.2 PCIe-NVMe 3.0×4で、最大データ転送速度は32GB/秒
ただしPCIe 3.0×4の実際のシーケンシャルリードは3500MB/秒くらい、シーケンシャルライトは2200MB/秒くらいになっています。HDDドライブはリードで500〜600MB/秒くらいが目安です。
RAID設定
本機種では、RAID 0, 1 , 5, 10の設定ができます。
- RAID 0・・・読み込み書き込みが高速で出来るし、分散してデータを保存ができる反面、1つのストレージに障害が発生すると復旧できません。なので、RAID 1やRAID 5と組み合わせて使うことが多いです。
- RAID 1・・・読み書きが遅いが、複数のストレージに「同じデータを書き込む」ので、1つのストレージに障害があってももう一つの方のデータを使って作業が出来ます。
- RAID 5・・・ドライブが3台以上必要で、データからパリティ(誤り訂正符号)を作成し、3台以上のハードディスクに分散して書き込み。分散書き込みなので速度も速く、1つのHDDに問題が発生しても残りのHDDから作業が可能。多くの人はこの設定を利用
- RAID 10・・・ドライブが4台以上必要で、RAID 0とRAID 1を組み合わせた構成。多くの人はこの設定を利用
電源
電源には色々と種類があり、電源変換効率が変わってきます。というのも、100Wの電源でも100W供給されるわけじゃなく、例えばBronzeだったら82W、Titaniumだったら92Wと変わってくるんですね。
- 80PLUS Bronze・・・82%~85%
- 80PLUS Silver・・・85~88%
- 80PLUS GOLD・・・87%~90%
- 80PLUS Platinum・・・90~92%
- 80PLUS Titanium・・・92~94%
グレードが上がるごとに、より高く変換してくれます。本機種はPlatinumなので性能は高く、電源も1000Wと大きいので安心して使えます。
ただし、メモリやストレージも含め最大構成にすると1000Wではちょっと不安なので、ストレージはHDD3台(1台約24W)、SSD4〜5台(1台約25W)くらいにするのがいいかもしれません。
概算ですが、HDDx3、SSDx5、メモリx8、Threadripper(すべて同じ最大消費電力)+ファンや光学ドライブなどを合わせると、558Wくらいになります。
これに以下のグラボを搭載すると、概算で最大消費電力はこのくらいです。(最大なので常にこれだけ消費するわけじゃありません)
- RTX 8000 295W+558W=853W
- RTX 6000 上と同じ
- RTX 5000 265W+558W=823W
- W5700 205W+558W=763W(これ以下はOKだと思います)
- RTX 4000 160W+558W=718W
足りないわけじゃないですが、パソコンを常にフル稼働させるならRTX8000/6000/5000を搭載するのは不安ですね。(そういう機会は少ないと思いますが)
AMDのグラフィックボードを選べば安心だと思います。性能も高めで安めだし。
セキュリティ
- Windows Defender・・・Windows搭載のセキュリティ機能で、マルウェアなどのウイルスからパソコンを守ってくれます。
- TPM・・・独立して機能するチップで、パスワードなどの重要情報を格納できる
- ハードディスクパスワード・・・ハードウェアレベルでパスワードを設定できるので、パソコン内部のデータが盗み見られる可能性がかなり減ります
- セキュリティケーブルスロット・・・パソコンが持ち出されないようにロックするワイヤー設置する個所
- OPAL・・・自己暗号化ドライブ。データが流出した時など、暗号化されているので解読されにくいという特徴があります。
- シャーシ イントルージョン スイッチ(オプション)・・・筐体へのアクセスを記録できる(誰かが勝手に開けて内部を触っても分かる)
- シャーシカバーキー・・・筐体内部にアクセスできないようにカギをかける
特殊なセキュリティのみを記載しましたが、セキュリティは堅牢ですね。個人はもちろん、企業でも安心して使うことが出来ます。
保証
保証は3年間翌営業日オンサイト修理(出張修理)なので、万が一の時はかなり助かりますね。本体をLenovoに送らなくていいので、面倒もありません。次の日の修理の人が来るのを待つだけです。
保証は標準で3年ですが、5年まで延長できます。
また、サポートも一般のサポートと違いプレミアサポートと言って、専用コールセンター(24時間365日!)にて専任エージェントがサポートしてくれるので、困ったときはプロに電話して聞くことが出来ます。
最後に
最強プロセッサーのAMD Threadripper搭載で、最高のスペックですね。
本格派の個人や、企業で使うことになると思いますが、これ以上の性能のものは私が知る限りではないので(年間200〜300台のパソコンをレビューしています)、ストレスフリーで安心して使えます。