2020年4月後半のHP週間ワークステーション売れ筋ランキングで1位になったHP Z2 SFF G4(2018年販売)の後継機種で、こちらも人気の機種になります。
旧モデルは2018年販売ですが、未だに人気ですね。
本機種は筐体も新しくなり性能もアップしたのに、最低価格は下がっているんですよね。
小型で置き場所に困らないし、スペックもほどほどなので、法人で言えばCADの練習用PCとして大量購入したり、個人ならそこまで複雑な設計をしない人には十分な性能があります。
Contents
Z2 SFF G5 Workstationのスペックレビュー
CPU | Intel core i3-10110 Intel Xeon W-1250/1250P Intel Xeon W-1270/1270P Intel Xeon W-1290P |
---|---|
チップセット | インテルW480 |
メモリ | ECCメモリ 最大128GB |
ストレージ | SSD M.2 2枚+SATA 2枚 or SSD M.2 2枚+HDD 2基 |
RAID | RAID0、RAID1 |
グラフィックス | NVIDIA Quadro P400/P620/P1000 NVIDIA Quadro T2000 |
OS | Windows 10 Pro Windows 10 Pro For Workstation Plus OSなし |
無線 | なし(有線のみ) |
光学ドライブ | 無し/DVD-ROM/DVDライター/ブルーレイドライブ |
セキュリティ | Kensington Cable Lock用スロット、パワーオンパスワード、セットアップパスワード、サイドパネル開閉センサーなど |
寸法 | 338 x 308 x 100㎜ |
重さ | 5.4㎏ |
電源 | 450W(80 PLUS 90%) |
保証 | 3年間 |
価格 | 15万8840円~ |
パソコンの頭脳であるCPUにはインテルXeonが搭載で、最大で10コア20スレッドのXeon W-1290Pが搭載できます。ただし、「フルカスタマイズ エントリーモデル」を選んだ場合はCore i3-10110のみ選択可能です。
メモリは、その場でメモリシステムエラーを検出して訂正できるECCメモリが搭載で、4スロット・最大128GB搭載できます。結構大容量ですね。
ストレージにはHP Z Turboの内蔵M.2 SSDが2枚と、HDD2基、もしくはHDD+SSD SATAかSSD SATA2枚の計4つのストレージが搭載できます。
グラフィックボードにはCADなどの専門的な高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたQuadroが搭載で、エントリークラスの3モデルと、ノートパソコン向けのT2000が選択可能です。エントリークラスとは言え、最大で2枚搭載できるのでパワフルになります。
本機種は「お勧め構成モデル」、「お勧め構成モデル(OS無し)」、「フルカスタマイズ エントリーモデル」、「フルカスタマイズ エントリーモデル(OS無し)」、「フルカスタマイズ パフォーマンスモデル」の5種類があり、お勧め構成でもフルカスタマイズモデルでも「カスタマイズできるパーツはほぼ同じ」ですが、OS無しモデルはCore i3搭載になります。
電源が450Wと若干小さいですが、スペックに対して十分なので問題ないと思います。
エントリークラスのワークステーションですが、Xeon搭載でメモリも最大128GBと大きく、最大でビデオメモリ4GBのQuadro P1000が搭載できるので、そこそこ大きな設計もやりやすいですね。
旧モデルと比較
<左・本機種/右・Z2 SFF G4>
旧モデルのHP Z2 SFF G4との比較です。(メモリ・SSD・バッテリーは最大値)
本機種 | Z2 SFF G4 | |
CPU | Core i3-10110 Xeon Wシリーズ |
Core i3-9100 Xeon Eシリーズ |
メモリ | 128GB(3200MHz) | 64GB(2666MHz) |
ストレージ | SSD2枚+HDD2基 | SSD2枚+HDD2基 |
グラフィックス | Quadro P400/620/1000 Quadro T2000 |
Quadro P400/620/1000 |
電源 | 450W | 310W |
重量 | 5.4㎏ | 6.3㎏ |
価格 | 15.8万円~ | 18.5万円~ |
本機種は筐体も新しくなり、幅が7㎝ほど小さく、約1㎏も軽くなっています。グラボはほぼ同じですが、CPUも新しくなりより高い性能、そして電源も大きくなっています。最低価格も約3万円ほど安くなっていますね。
G4はいまだに人気ですが、やはり、今購入するならG5の方が性能も高くお得です。
ライバル機種
<左から本機種/P340 Tower/P340 SFF>
本機種と似たような最新機種との比較です。(メモリ・SSD・電源は最大値。スマホの人は表を右にスクロールできます)
本機種 | ThinkStation P340 Tower | ThinkStation P340 SFF | |
CPU | Core i3 Xeon W-1250/1250P Xeon W-1270/1270P Xeon W-1290P |
Core i3~i9 Xeon W-1250/1250P Xeon W-1270/1270P Xeon W-1290/1290P |
Core i3~i9 Xeon W-1250/1270/1290 |
メモリ | 128GB | 128GB | 128GB |
ストレージ | SSD2枚+HDD 2基 | SSD6枚+HDD 2基 | SSD 2枚+HDD 2基 |
グラフィックス | Quadro P400/620/1000 Quadro T2000 |
Quadro P400/620/1000/2200 Quadro RTX /4000/5000 |
Quadro P400/620/1000 |
電源 | 450W | 500W | 380W |
重量 | 5.4㎏(標準構成) | 9.4㎏(最大構成) | 5.7㎏(最大構成) |
価格 | 15.8万円~ | 11.1万円~ | 11.4万円~ |
P340 Towerは一番大きな筐体で、電源も最大500W、最大重量9.4㎏となりますが、筐体のサイズで言えばミニタワークラスです。この機種は若干ランクが上の機種で、ストレージは本機種の倍の容量、Quadro RTX 5000も搭載できます。
P340 SFFは同じくらいのサイズで、似たようなスペックになっています。ただし、電源が本機種より小さいので、パフォーマンスも低くなります。
本機種は若干価格が上がりますが、電源もそこそこ大きく、小さな筐体で、CPUやメモリ、グラボ、そして電源と、バランスの良い機種です。
メリット・デメリット
メリット
・小型軽量でどこにでも置きやすい
・インターフェイスが豊富
・ISV認証
・電源容量も十分
デメリット
・小型筐体なので、拡張性が低い
Z2 SFF G5 Workstationの特徴
本機種は立てて置いてもいいし、横にしてもいいので置き場所に困らないと思うし、筐体も小さく軽いのでより一層置きやすいと思います。
- 幅100㎜は、はがきの短辺(100㎜)
- 奥行き308㎜は、千円札2枚分(300㎜)
- 高さ338㎜は、一万円札2枚分(320㎜)
とほぼ同じサイズです。
寝かせて置くと、そんなに重たくないものなら筐体の上に置けるので、より省スペースですね。
この様にモニターを置いたりすると、より場所を取らないです。
筐体内部です。小型筐体なのに内部はすっきりしています。扱える場所も多くないので、分かりやすいですね。
拡張スロットは、以下になります。
- PCI Express 3.0×16 1スロット
- PCI Express 3.0×4(x16メカニカル) 1スロット
- PCI Express 3.0×1 2スロット
拡張ベイは3.5インチと2.5インチ、オプティカルベイ、ハイブリットベイ3.5インチが各1つずつになります。
小型なのでそこまでの拡張性は無いですが、この筐体サイズを考えると普通だと思います。
前面の吸気口はメッシュ状なので、大きく空気を取り込めますね。
その吸気口部分にはダストフィルターがあるので、ごみやほこりが内部に入りにくい設計になっています。
13年連続国内シェアNo.1
IDCと言う調査会社によると、HPのワークステーションは日本国内で13年連続でシェアNo.1を記録しており、トヨタ自動車東日本株式会社 やEIZO、医療関係の東陽テクニカなど多くの有名企業がHPのワークステーションを導入しています。もちろん、大企業だけでなく建築設計事務所や大学、イラストレーターなどもHPを使用している人が多いです。
こちらで一部企業を紹介しているので、興味がある方はご覧ください。
インターフェイス
小型ですがインターフェイスは豊富です。
前面にはSDカードリーダー(オプション)、オプティカルドライブ(一部モデルでオプション)、3.5インチベイ、USB-C(最大データ転送速度10Gbps)、USB-Aが4つ(内2つが10Gbps、2つが5Gbps)、そしてヘッドフォンジャックになります。
背面には、オーディオLINE OUT、Display Port 1.4が2つ、RJ45が2つ、マウスやキーボード用のUSB-A(480Mbps)が2つに、USB-Aが4つ(内2つが10Gbps、2つが5Gbps)になります。
これに加え、フレックスI/Oポートがオプションで追加できます。
また、各グラフィックボードには以下のインターフェイスがあります。
インターフェイス | 最大搭載数 | |
P400 | mini Display Port x 3 | 2 |
P620 | mini Display Port x 4 | 2 |
P1000 | mini Display Port x 4 | 2 |
MILスペック
Z2 Miniは36万時間のテストをクリア、米軍の物資調達基準(MIL-STD 810G)にも対応した機種になります。セキュリティも含め、堅牢性が高い機種ですね。
ISV認証
ISV認証とは、独立系ソフトウェアベンダーからソフトウェアアプリケーションの互換性や動作の認定を受けた機種になります。画像は一部のベンダーですが、AUTODESKやSolidWorks、eDrawing、Adobe、Bentleyなどの主要ベンダーから認証を受けています。
ZCentral Remote Boost
ZCentral Remote Boostとは、簡単に言うと複数のユーザーが送信元コンピューターのデスクトップを共有でき、リモートアクセスでも編集やビッグデータの視覚化などできます。
例えば複数の本機種をラックマウントに搭載し、リモートワークで社員が自宅や外出先から本機種に接続し、パワフルな作業ができるようになります。
しかも、社員が自宅で使っているパソコンには「データは送信されず、画面のピクセル情報のみ転送」されるので、セキュリティ面でも安心です。
詳しくは、公式サイトをどうぞ。
CPU
Xeon W-1250/1250P | Xeon W-1270/1270P | Xeon W-1290P | |
製造プロセス | 14nm | 14nm | 14nm |
コア/スレッド | 6/12 | 8/16 | 10/20 |
ベースクロック | 3.3/4.1GHz | 3.4/3.8GHz | 3.7GHz |
ターボブースト時 | 4.7/4.8GHz | 5.0/5.1GHz | 5.3GHz |
キャッシュ | 12MB | 16MB | 20MB |
DirectX | 12 | 12 | 12 |
OpenGL | 4.5 | 4.5 | 4.5 |
TDP | 80W/125W | 80W/125W | 125W |
スコアの目安
- 2000~・ネットサーフィンでもストレスを感じるほど
- 5000~・web閲覧・動画視聴・Office資料作成があまりストレスなくできる
- 7000~・ビジネス用途でがっつり使ってもストレスを感じることはほぼ無い
- 10000~・ゲーミングPCや編集など専門的な機種に搭載されることが多い
↓グラフをタップすると数値が表示されます↓
[visualizer id=”17757″ lazy=”no” class=””]グラフを見るとCore i3-10110の性能がかなり低く見えますが、スコア約9000なので実際はそんなに悪い性能ではありません。ただし、ワークステーションとして見ると、非力感は否めません。
グラフィックス
Quadro P400 | Quadro P620 | Quadro P1000 | |
GPUアーキテクチャ | Turing | Turing | Turing |
CUDAコア | 256 | 512 | 640 |
メモリ帯域 | 32Gbps | 80Gbps | 80Gbps |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 |
メモリ容量 | 2GB | 2GB | 4GB |
API | Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
Shader 5.1 OpenGL 4.5 DirectX 12 Vulkan 1.0 |
TDP | 30W | 40W | 50W |
Quadro T2000 | |||
GPUアーキテクチャ | Turing | ||
CUDAコア | 1024 | ||
メモリ帯域 | 128Gbps | ||
メモリタイプ | GDDR5 | ||
メモリ容量 | 4GB | ||
TFLOPS | 3.5 | ||
TGP | 40-60W |
グラフィックスはOpenGL(高度な技術計算)に最適化されたQuadroが搭載で、業務用ワークステーションに搭載されます。よく聞くGeForceはDirect Xで、3Dゲームに最適化されたグラボです。
Quadro P400とP620はビデオメモリも2GBと小さく、本当のエントリークラスです。学生向けのCAD練習用PCとしてなどの使い方であれば問題ないですが、パワフルな作業には向いていません。最低でも(というか本機種では最高グラボですが)、P1000は欲しいところですね。
また、グラボは2枚搭載可能ですが、2枚搭載したからと言って性能が2倍になるわけじゃありません。通常、2枚搭載のグラボの性能は最大で1.8倍くらいになりますが、2枚載せるくらいなら性能が高い1枚を載せた方が良いことがほとんどです。
また、おそらくですが、2枚目のグラボはPCI Express3.0 x4に入れると思うので、4レーン接続だと16レーンの様に最大性能を発揮できないかもですね。
公式サイトではQuadro T2000の詳細に触れていませんが、T2000はノートパソコン用のグラフィックボードです。Qudaコアを見ると1024と多いですが、ノートパソコン用なので単純にデスクトップ用のグラボのCUDAコア数と比べることはできません。
メモリ
メモリはデータを一時的に保存する部分で、メモリが大きいと多くの(大きな)データを処理しやすくなります。
本機種はDDR4 3200MHzで、4スロットになります。最大128GBなのでそこそこ大きな容量ですね。
ちなみに、CPUのメモリ対応周波数はこの様になっているので、3200MHzでは動作しません。
・Xeon W-1250/1250Pは2666MHz
・Xeon W-1270/1270P、1290Pは2933MHz
ストレージ
ストレージはデータを保存するだけの場所じゃなく、パソコンの起動やWebサイトの表示速度にも影響があります。
HPのワークステーションには普通のストレージでなく、HP Z Turbo ドライブと言う高速化されたストレージが搭載可能で、シーケンシャルリードは約4倍向上しているということです。
SSD(PCIe NVMe) | SSD(SATA) | HDD | |
最大データ転送速度 | 最大16Gbps~32Gbps | 最大6Gbps | 最大500~600Mbps |
温度 | 熱くなりにくい | 熱くなりにくい | 熱くなりやすい |
価格 | 高い | 中価格 | 安い |
本機種ではPCIe NVMe SSDが2枚と、SSD SATAが2枚もしくはHDD2基、SSD SATA1枚+HDD1基が選べます。
容量を考えると、SSD2枚+HDD2基が一番容量が大きくなりますね。
RAID設定
本機種では、RAID 0, 1の設定ができます。
- RAID 0・・・読み込み書き込みが高速で出来るし、分散してデータを保存ができる反面、1つのストレージに障害が発生すると復旧できない
- RAID 1・・・読み書きが遅いが、複数のストレージに「同じデータを書き込む」ので、1つのストレージに障害があってももう一つの方のデータを使って作業が出来る
セキュリティ
HPでは「世界で最も安全なビジネスPC」と宣伝しており、その名の通りHP独自のセキュリティが搭載されています。
こちらは一部ですが、
- HP Sure Start・・・自動的に攻撃や破損からBIOSを回復する自己修復BIOSで、保護された状態を維持できる
- HP Sure SENSE・・・AIを活用し、マルウェアを検知・ブロックする
- HP Sure Admin・・・IT管理者がネットワーク経由でBIOS設定を安全に管理できるデジタル署名を作成できる
- ケンジントンロック・・・盗難防止用のワイヤーを設置可能
などがあります。
電源
電源の大きさはCPUやメモリ、グラボ並みに重要で、より大きな電源はより大きなパフォーマンスを出せます。
本機種の電源は450W・電源変換効率は90%で、80PLUS PlatinumかGOLD並みの変換率です。最大供給電力は405Wですね。
CPUにPが付くシリーズ(125W)とQuadro T2000(最大60W)を選ぶと205Wになり、その他メモリ2枚(14W)、HDD(24W)、SSD2枚(50W)で合計約273Wです。
グラボ2枚搭載しても約313Wなので、十分な電源容量だと思います。このクラスの小型筐体のPCは、発熱を抑えるためにスペックに対して小さな電源を搭載していることが多いのですが、本機種は妥当な電源だと思います。(グラボ2枚の時はQuadro Pシリーズのみ搭載可能)
サポート・保証
保証は、土日祝日を含む3年間のオンサイト修理とパーツ保証が標準保証になっています。オンサイト修理とは、エンジニアが会社や自宅に来て、その場で修理をしてくれるサービスです。また、最長5年まで延長できます。
公式サイトではサポートの事に一切言及していないのですが、HPのビジネスPCは、通常、電話・チャット・LINEやツイッターでのサポートを展開しており、「日本でのサポート」+「月~金が朝9時から夜21時まで、土曜日が朝9時から夕方17時まで」になっています。
コールセンターは日本にあるので、質も高く、話も速いですね。
まとめ
性能自体はエントリーモデルですが、CADやBIM(扱うデータ規模にもよりますが)、Adobe系ソフトも全然使えるので、導入しやすい機種だと思います。