シングルコア性能が高いインテル第11世代CPU搭載で、内蔵グラフィックスにはIris Xe、そしてグラフィクボードにはNVIDIA Quadro T500が搭載のエントリークラスのワークステーションです。
WiFi6に対応し、4G LTEモデルもあり。そして15.6型ワークステーションとしてはかなり軽い1.76㎏と、機動性が抜群に良い機種です。
外出先でじっくりと作業をする人に向いた機種です。
Contents
ZBook Firefly 15 G8のスペックレビュー
CPU | Intel core i7-1165G7 Intel core i7-1185G7 |
---|---|
メモリ | 最大64GB |
ストレージ | SSD 最大2TB |
グラフィックス | Iris Xe NVIDIA Quadro T500 |
ディスプレイ(14型) | FHD IPS液晶 UHD(4K) IPS液晶 |
OS | Windows 10 Pro |
無線 | WiFi6、Bkuetooth 5、4G LTE、NFC |
生体認証 | 顔認証、指紋センサー |
セキュリティ | TPM、HP Endpoint security Controller、HP Sure sense、HP BIOSphere、HP Sure Clickなど |
寸法 | 359.5 × 233.6 × 19.2㎜ |
重さ | 1.76㎏ |
バッテリー | 最大約14時間 |
保証 | 3年 |
価格 | 20万6800円~ |
パソコンの頭脳であるCPUには最新のインテル11世代CPUが搭載で、クラス最高性能があるCore i7-1186G7も搭載できます。シングルコア性能がかなり高いのでモデリングもスムーズで、3DCADでオブジェクトを作りこむ時も快適に作業ができますね。
グラフィックスにはDirectX(3Dゲーム)に最適化されたGeForceじゃなく、高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたNVIDIA Quadro T500が搭載です。クラス的にはエントリーモデルですが、VRAM 4GBでCUDAコアは上位モデルのQuadro T1000と同じ数なのでパワフルです。
メモリは、モバイルワークステーションとしてはそこそこ大きい最大64GBです。大きめのデータも扱いやすいですね。
ストレージは高速モデルのM.2 PCIe NVMeで、最大2TB搭載できます。PCIeはパソコンの起動もデータ移動も速いので、ストレスレスに作業ができます。また、スマホの様なスタンバイ機能があり、パソコンを開けたらすぐに使い始めることができます。
無線はWiFi6対応、4G LTEモデルあり、NFC(近距離無線通信)も搭載可能なので、無線環境は抜群です。移動することが多い人でも、LTEモデルであれば常時インターネット接続が可能です。
セキュリティと言えば、本機種にはHP独自のものが多く搭載しており、「世界で最も安全なモバイルワークステーション」とうたっているほどで、さすが13年連続国内シェアNo.1を達成しているZBookといったセキュリティです。
保証も3年間オンサイト修理で、安心して使うことができます。
旧モデルとの比較
旧モデルのFirefly 15 G7との比較です。(メモリ・SSD・バッテリーは最大値)
本機種 | Firefly 15 G7 | |
CPU | Core i7-1165G7/1185G7 | Core i7-10810U~10510U |
メモリ | 64GB(3200MHz) | 64GB(3200MHz) |
ストレージ | SSD 2TB | SSD 2TB |
GPU | Quadro T500 | Quadro p520 |
ディスプレイ | FHD、UHD | FHD、UHD |
無線 | WiFi6、4G LTE | WiFi6、4G LTE |
バッテリー | 14時間 | 17時間 |
重量 | 1.76㎏ | 1.76㎏ |
価格 | 20.6万円~ | 20.6万円~ |
Firefly 15 G7は旧モデルと言っても2020年8月に販売されたばかりなので、古い機種と言うわけではありません。また、筐体もほとんどのスペックも同じになり、変更点はより性能が高いCPUとグラボが搭載されただけです。
新モデルと言うよりも、中身が若干変わっただけのバージョンアップモデルですね。
[visualizer id=”17730″ lazy=”no” class=””]10610Uは7142、10810Uは9121となっています。
ライバル機種
本機種と似たような最新機種との比較です。(メモリ・SSD・バッテリーは最大値。スマホの人は表を右にスクロールできます)
本機種 | Thinkpad P15s gen 2 | Firefly 14 G8 | |
CPU | Core i7-1165G7/1185G7 | Core i5-1135G/1145G7 Core i7-1165G7/1185G7 |
Core i7-1165G7/1185G7 |
メモリ | 64GB | 48GB | 32GB |
ストレージ | SSD 2TB | SSD 1TB | SSD 2TB |
グラフィックス | Iris Xe Quadro T500 |
Iris Xe Quadro T500 |
Iris Xe Quadro T500 |
ディスプレイ | FHD、UHD | FHD、UHD | FHD |
無線 | WiFi6、4G LTE | WiFi6、4G LTE | WiFi6 |
バッテリー | 14時間 | 15.3時間 | 14時間 |
重量 | 1.76㎏ | 1.75㎏ | 1.4㎏ |
価格 | 20.6万円~ | 14.7万円~ | 20.3万円~ |
上記機種は機動性を重視したモデルで、スペック的にはエントリークラスになります。CADや画像・動画編集などをする人向けで、分析や本格的な映像編集などには向きません。
Firefly 14 G8のみ14型で若干スペックが下がりますが、外出用と割り切っている人はこちらでもよいかもしれません。ただし、LTEはなしです。
本機種とThinkPad P15s Gen 2はほぼ同じスペックで、LTEもWiFi6もあり、外出先でちょっとした修正作業をする人や、顧客に進捗状況を紹介するなどの比較的低負荷な使い方に合います。
本機種はより多くのセキュリティが付いているため若干価格が高めで、ThinkPadは普通以上のセキュリティですがHPほどたくさんついていません。
メリット・デメリット
メリット
・15型ワークステーションでは小型軽量で持ち運びがしやすい
・セキュリティがすごい
・WiFi6、LTE搭載
デメリット
・エントリーモデルなので、高負荷な作業には向いていない。
ZBook Firefly 15 G8の特徴
本機種で一番驚いたのが寸法と重量なんですが、ワークステーションは通常でかい・ごつい・重いが当たり前なのですが、本機種は軽いですね。
寸法は幅359.5㎜、奥行き233.6㎜、高さ19.2㎜で、大学ノートA4サイズ(297㎜x210㎜)と比べると、幅+6.25㎝、奥行き+2.36㎝です。普段使い用のノートパソコンと同じサイズですね。
厚さは19.2㎜で、一円玉(直径20㎜)とほぼ同じ寸法です。カバンの中のスペースを取らないですね。重さは1.76㎏なので、ワークステーションとしてはかなり軽いです。
筐体のエッジは角が付くような設計で、おしゃれですね。
ディスプレイが開けやすいように、開閉部分が「くの字」になっています。
本機種にはスタンバイモードがあり、スマホやタブレットの様にすぐに起動するので、待ち時間無く使い始めることができます。通常のスリープは無いようです。
ZCentral Remote Boost
ZCentral Remote Boostとは、簡単に言うと複数のユーザーが送信元コンピューターのデスクトップを共有でき、リモートアクセスでも編集やビッグデータの視覚化などできます。
例えば本機種をメインのパソコンとして他のパソコンからアクセスし、手元に本機種がなくても他の機種で作業ができます。
チームでデータを共有したり、修正作業などをするときにすごく役に立ちますね。
詳しくは公式ページをどうぞ。
キーボード
キーストローク(キーの中心から次のキーの中心までの距離)は18.7x18.7㎜とデスクトップ用キーボード並みで、キーストローク(キーを押し込む距離)が1.5~1.7㎜と比較的深いので、打感も良くタイピングも快適にできると思います。
中央にある黒いボタン(トラックポイント)は、カーソルを動かしたりできるので、慣れると「手がホームポジションから離れずに」作業ができます。
また、キーボードは防滴機能付きで、バックライトもあります。
ISV認証
ISV(独立系ソフトウェアベンダー)認証を得ており、安心して使えると思います。Adobe IllustratorやPhotoshop、InDesign、XDに、CADソフトの有名どころのSketchUpやRevit、SolidWorksなども認定済みです。(上の画像は認定ソフトの一部です)
CPU
製造プロセス | コア/スレッド キャッシュ |
グラフィックス | ベースクロック シングルコアターボ時 |
|
Core i7-1185G7 | 10nm SuperFin |
4/8 12MB |
Iris Xe | 3GHz 4.8GHz |
Core i7-1165G7 | 10nm SuperFin |
4/8 12MB |
Iris Xe | 2.8GHz 4.7GHz |
スコアの目安
- 2000~・ネットサーフィンでもストレスを感じるほど
- 5000~・web閲覧・動画視聴・Office資料作成があまりストレスなくできる
- 7000~・ビジネス用途でがっつり使ってもストレスを感じることはほぼ無い
- 10000~・ゲーミングPCや編集など専門的な機種に搭載されることが多い
↓グラフをタップすると数値が表示されます↓
[visualizer id=”17028″ lazy=”no” class=””]スコアは1万オーバーの高性能CPUですね。「ハイパフォーマンスモデル」のCore i7-10750Hに近い性能になっています。
こちらはCineBench R20のスコアです。
[visualizer id=”17030″ lazy=”no” class=””]マルチコア性能は6コア12スレッドのCore i7-10750Hに負けていますが、シングルコア性能はCore i7-1185G7で20%以上高くなっています。モデリングなどのシングルコア性能が必要な場面で、快適に使えますね。
グラフィックス
グラフィックスは、内蔵グラフィックス最高性能があるIris Xeと、NVIDIA Quadro T500が搭載です。
NVIDIA Quadro T500(Mobile) | |
CUDAコア | 896 |
ベースクロック | 1365MHz |
ブーストクロック | 1695MHz |
メモリ帯域 | 80Gbps |
メモリタイプ | GDDR6 |
メモリ容量 | 4GB |
TGP | 18~25W |
API | Shader Model 5.1、OpenGL 4.6、DirectX 12.1 |
グラフィックボードは、DirectX(3Dゲーム)に最適化されたGeForceじゃなく、高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたQuadroで、CAD等を使う設計・建築、メディアクリエイターの業務用グラフィックボードです。
旧モデルのFirefly 15 G8に搭載されているグラフィクボードはQuadro P520で、CUDAコアが384だったので、倍以上高い性能です。VRAM も4GBあるので、比較的快適に使えるスペックです。
ディスプレイ
解像度 | 光沢 | 液晶 | 輝度 |
FHD 1920×1080 |
なし | IPS | 250nit |
FHD 1920×1080 |
なし | IPS | 1000nit(Sure view搭載) |
UHD 3840×2160 |
なし | IPS | 400nit |
UHD | 4K解像度のウルトラ・ハイディフィニション | ||
FHD | フル・ハイディフィニション、一般的な画質 | ||
光沢 | 光沢ありは発色が良い反面、自分や背景が映り込みしやすい。光沢無しは映り込みがしにくい | ||
IPS液晶 | コントラスト比が高く、視野角も広い | ||
nit | 明るさを表す単位。通常250nitが標準 | ||
HP Sure View | 輝度や視野角を狭くし、のぞき見を防止する機能 |
ディスプレイ1つは「なぜ250nitと輝度が低い」のか分かりませんが、日中の明るいところで使うとほんの少しストレスを感じるくらい暗いです。
その他は1000nitか400nitと高輝度なので、日の当たる場所でも快適に使えます。
こちらは別機種ですが、HP Sure ViewをONにした状態とOFFの状態の写真です。カフェなどの不特定多数の人がいるところで、使うことが多いです。
ディスプレイ上部のカメラには、プライバシースライダーという物理シャッターがあるので、Web会議の離席中やカメラを使用していないときは閉じておくと、プライバシーが守られます。また、IRカメラも搭載で、顔認証でサインインもできます。
メモリ
メモリはデータを一時的に保存する場所で、パソコンの作業台になります。大きなメモリを搭載していると、より大きなデータが扱いやすくなります。
本機種にはDDR4-3200MHz搭載で、スロットは2つあるようで最大64GBまで搭載可能です。また、3200MHzという動作周波数が高いので、処理速度も速いです。
ストレージ
SSD | SSD(SATA) | HDD(本機種非搭載) | |
最大データ転送速度 | 最大16Gbps~32Gbps | 最大6Gbps | 最大6Gbps(SATAの場合) |
平均起動時間 | 10秒~15秒 | 15秒前後 | 30秒~2分(新品の場合) |
温度 | 熱くなりにくい | 熱くなりにくい | 熱くなりやすい |
価格 | 高い | 中価格 | 安い |
本機種搭載のストレージはM.2 PCIe NVMeで、パソコンの起動も速く、データ転送速度も速いです。最大2TBも搭載できるので、モバイル用途としては十分だと思います。
バッテリー駆動時間
バッテリーは3セル・56Whで最大約14時間ですが、高負荷な事をする機種なので、外出時にはモバイルバッテリーや充電アダプターを持ち運ぶと良いと思います。
セキュリティ
HPのワークステーションは、「世界で最も安全なモバイルワークステーション」と宣伝しており、多くのHP独自のセキュリティが搭載しています。以下に紹介するのは一部のセキュリティで、詳しくは公式サイトをどうぞ。
- HP Sure Sense・・・ディープラーニングを活用したリアルタイム検知機能があり、悪意のあるファイルを検出し、マルウェア、ゼロディ攻撃、ランサムウェアなどからPCを守るセキュリティ機能
- HP BIOSphere・・・ウイルスやマルウェアによる不正なBIOSの書き換えや、破損からシステムを保護
- HP Sure Click・・・Web閲覧のセキュリティ強化で、タブを閉じるだけでマルウェアが消滅する
- HP Sure Run・・・OSの重要な機能や設定を構成時の状態に維持し、万が一設定が無効になった場合は再起動し、安全な状態に戻す
- HP Sure Recover・・・OSがウイルス感染しても自動的にリカバリーする
- HP Sure Start・・・自動復旧機能で攻撃を受けても自動でリカバリーする
- HP Secure Erase・・・BIOSの中のSecure Eraseを使って内蔵ドライブのデータを完全に削除することが出来る
- ナノセキュリティロックケーブルスロット・・・盗難や持ち運び防止用のセキュリティワイヤーを使うスロット
- TPM・・・独立して機能するチップで、パスワードなどの重要情報を格納できる
- Windows Defender・・・Windows搭載のセキュリティ機能で、マルウェアなどのウイルスからパソコンを守ってくれる
WiFi6
次世代通信規格のWiFi6は今まで以上に多くのデバイスに同時に電波を飛ばせ、最大通信速度も9.6Gbpsとかなり速く、前規格のWiFi5(6.9GB/秒)と比べて40%ほど速くなっています。
例えばカフェや社内WiFiなどの利用者が多いWiFiを使うときでも、安定してインターネットが使えます。
LTE
LTEは、4Gのインテル XMM 7360 LTE-Advanced(GPS機能付き)対応モデルがあり、下り最大450Mbps、上り最大50Mbpsになります。
携帯大手3社の重要なバンドと、検証済みキャリアは以下になります。
- docomo・・・1,3,19,21
- au・・・1,18
- softbank・・・1,3,8
重要バンドすべてに対応しいているので、安心ですね。
NFC
NFCは近距離無線通信規格の一つで、NFC機能があるデバイス同士を近づけるとデータ移動などが出来ます。
例えば、スマホで見ているページをパソコンで見たいときにスマホをパソコンに近づけると、パソコンでも同じページが表示されるんです。
HP Performance Advisor
こちらはワークステーションのパフォーマンスを管理できるツールで、アプリやソフト、ドライバに対し、初期構成・カスタマイズを最適化します。
また、CPUのコアを制限して、このソフトは1コア使って、このソフトが3コア使ってなどの設定もできるので、作業がやりやすいように設定もできます。
本機能の詳細は、公式サイトをどうぞ。
インターフェイス
右側面インターフェイスにはnanoSIMスロット(LTEモデルのみ)、Thunderbolt 4が2つ、HDMI、USB-A 3.1 Gen 1(最大データ転送速度5Gbps)そして電源ポートがあります。
左側面インターフェイスにはナノセキュリティスロット、USB-A 3.1 Gen 1、マイク/ヘッドフォンジャック、そしてスマートカードリーダー付きです。
インターフェイスは充実していますね。ちなみに、Thunderblt 4は新規格のポートで、以下のような特徴があります。
- Power delivery対応、DisplayPort出力機能付き、DC-in機能付き
- 最大データ転送速度40GB/秒が2mのケーブルでも出る(以前は0.8mまで)
- PCIeの転送速度は32GB、ストレージ転送速度は最大3000Mbps
- 4Kディスプレイ2台同時に出力可能
- 8K出力にも対応
- USB4.0規格に準拠
サポート・保証
HPでは電話やチャット、LINE、Twitterでもサポートをしており、本機種の場合は3年間のオンサイト修理保証が付いています。
オンサイト修理とは、エンジニアが現場(会社や自宅)に来てくれて修理してくれるので、安心だし、早いですね。(修理は土日祝日を含む週7日対応)
ビジネスモデルのサポート受付時間は、月~金が朝9時から夜21時まで、土曜日が朝9時から夕方17時までとなっています。また、ワークステーション専用のテクニカルサポート部署が東京にあり、ベテランエンジニアが対応してくれます。
最長5年まで延長でき、サポートや保証が手厚いので助かりますね。
まとめ
ワークステーションとしてはエントリークラスになりますが、2DCADやそこまで複雑じゃない3DCADなら十分使えるスペックですね。
15.6型のワークステーションにしてはかなり軽いので、移動が多いビジネスパーソンや学生に向いた機種だと思います。また、UHDディスプレイを搭載した場合は細かなディーテールも作りやすいので、より作業がしやすくなりますね。