最大でも中規模以下の3Dワークフローや、FHD動画編集、小規模なレンダリングに向いた機種で、メモリやSSDの容量も小さめです。
バッテリー駆動時間が長いので、外出時にも軽い作業をするような人に合うと思います。
当サイトの、ワークステーションとしての評価はこの様になりました。
スペック | [usr 4.6] |
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コスパ | [usr 3.6] |
総合評価 | [usr 4.6] |
Contents
ZBook Power 15 G9のスペック
CPU | Core i7-12700H Core i7-12800H |
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メモリ | DDR5 最大32GB |
ストレージ | SSD 最大1TB |
グラフィックス | NVIDIA RTX A1000 NVIDIA RTX A2000 |
ディスプレイ(15.6型) | FHD IPS液晶 非光沢 |
OS | Winodws 10 Pro(Windows 11 Proからのダウングレード) |
無線 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
オーディオ | Bang&Olufsen |
生体認証 | 指紋センサー、顔認証 |
WEBカメラ | 720p、IRカメラ |
セキュリティ | HP Wolf Security |
寸法(幅×奥行×高さ) | 359.4 × 233.9 × 22.8㎜ |
重さ | 約2㎏ |
バッテリー 電源 |
約16時間 約150W |
保証 | 3年間 |
価格 | 37.6万円~ |
<性能評価>
パソコンの頭脳であるCPUは最新のインテル第12世代が搭載で、ハイパフォーマンスモデルのCore i7 Hシリーズが搭載です。上位モデルのCPUで、かなり高い性能です。Core i7-12800HはvPro対応、Core i7-12700Hは非対応です。
メモリは最新のDDR5-4800MHzが搭載で、メモリ1枚・最大32GBになります。ワークステーションとしてはあまり大きくない容量ですが、本機のスペックを考えると問題ない場合が多いと思います。
ストレージはM.2 SSDで、最大1TBです。大きなデータを扱う場合は、外付けストレージがすぐに必要になると思います。
グラフィックボードは業務用で高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたNVIDIA Aシリーズが搭載で、ミドルクラスのRTX A2000か、RTX A1000の2種類になります。
ディスプレイはいたって普通のスペックで、FHD解像度、IPS液晶になります。
ギガビットイーサネット搭載で、Wi-Fi 6Eにも対応しているので、安定した高速回線で作業ができます。
その他のスペックは、指紋センサーと顔認証が搭載し、Bang&Olufsenがチューニングしたスピーカーが2つ搭載、Webカメラは720pとなっています。
中規模な3Dワークフローや、1080p映像編集、小規模なレンダリングシミュレーションなどに合います。
2022年のトレンドと比較
2022年のノートパソコンのトレンドをまとめたので、本機がどのくらい満たしているか比較してみます。(〇/標準搭載、△/モデルによってはあり、×/なし、-/未確認)
12世代CPU | DDR5 | PCIe 4.0 | アスペクト比16:10 |
〇 | 〇 | – | × |
Wi-Fi 6E | sRGB 100%以上 | 輝度300nit以上 | 1080P Webカメラ |
〇 | – | 〇 | × |
Thunderbolt 4 | 生体認証 | アルミニウム素材 | バッテリー14時間以上 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
未確認の部分もありますが、ほぼ上の項目を満たしています。画面アスペクト比が16:10じゃないのが残念です。
旧モデルとの比較
<上段左からZBook Fury/ZBook Studio/ZBook Power、下段左からZBook FireFly 16/FireFly 14>
ZBook Powerシリーズは、2022年に初めて販売が開始し、旧モデルはありません。
ZBookには
・FireFly(エントリ―クラス)
・Studio(ハイエンド)
・Fury(ハイエンド)
があり、PowerはFireFly以上、Studio未満の位置づけです。
最大の違いは、本機のみ画面アスペクト比が16:9で、他の機種は16:10と縦に長いので、より多くの情報が表示されます。
ZBook Power 15 G9の特徴
左右下のベゼル(画面の黒い枠)がすごく細く、コンパクトですね。ずんぐりむっくりしていないので、おしゃれですね。
寸法は、
・幅 359.4㎜
・奥行 233.9㎜
・高さ 22.8㎜
で、普段使いPC並みの寸法です。
厚さは22.8㎜と大きめですが、一般的なワークステーションのサイズです。エッジが角ばっており、細かなところにも気を配ったデザインですね。
筐体には陽極酸化仕上げによる高い耐傷性のあるCNCアルミニウムを採用しており、耐久性も高く、高級感もあります。
底面にはメッシュ状の通気孔があり、フレッシュエアーをしっかり吸い込んでくれそうです。
MILスペック
本機はMIL規格と言う米軍の物資調達規格に準拠しており、耐久性・堅牢性の高い機種になっています。
ISV認証
本機はISV(独立系ソフトウェアベンダー)により、アプリケーションとの互換性や安定稼働、高い運用性をテストされてISV認証を取得しているので、安心して使えます。
英語版のみですが、公式サイトでどのベンダーのどのソフトと互換性があるか確認が出来ます。例えば上の画像は本機種「Media&Entertainment」「Autodesk」「3ds Max」「2022」で検索した結果です。
もちろん認定されているので、名前が表示されます。使っているソフトが認証済みかどうか確認したい場合は、上のリンクから確認をどうぞ。
キーボード
キーボードは日本語キーでバックライト付き、テンキー付き、防滴機能付きになります。
キーピッチ(キーの中心から次のキーの中心までの距離)は縦横18.7㎜で、十分な幅があります。また、キーストローク(キーを押し込む距離)は1.5~1.7㎜とちょうどよい深さがあり、タイピングしやすいと思います。
スピーカーはキーボード上部にあり、バング&オルフセンのスピーカーが2つ、デュアルアレイマイクが搭載です。WebカメラはHD画質の720pで、普通に会議などはできます。
パームレストには指紋センサーがあり、顔認証カメラもあるので、サインインは一瞬で終わります。
ZCentral Remote Boost
ZCentral Remote Boostとは、簡単に言うと複数のユーザーが送信元コンピューターを共有でき、リモートアクセスでも編集やビッグデータの視覚化などできます。
例えば複数の本機種をラックマウントに搭載し、リモートワークで社員が自宅や外出先から本機種に接続し、パワフルな作業ができるようになります。
しかも、社員が自宅で使っているパソコンには「データは送信されず、画面のピクセル情報のみ転送」されるので、セキュリティ面でも安心です。
複数台購入を考えている企業の方は、公式サイトで詳しく紹介されているので読まれてみてください。
CPU
Core i7-12800H | Core i7-12700H | |
Pコア | 6 | |
Eコア | 8 | |
スレッド | 20 | |
キャッシュ | 24MB | |
ターボブースト時 | 4.8GHz | 4.7GHz |
Pコア最大周波数 | 4.8GHz | 4.7GHz |
Pコア基本周波数 | 2.4GHz | 2.3GHz |
Eコア最大周波数 | 3.7GHz | 3.5GHz |
GPU実行ユニット | 96 | |
ベースパワー | 45W | |
最大パワー | 115W |
CPUはPコア(Performance Core)とEコア(Efficient Core)の2つを搭載しており、高負荷な作業はPコアで処理を、低負荷な事はEコアで処理することによって、パワフルでも省電力性を兼ね揃えたCPUになっています。
また、Intel Thread Directorというハードコアが、命令をより効率よくPコアとEコアに割り当てて実行できるので、性能もかなり上がっています。
vProは企業が多くのPCを一括管理しやすく、パフォーマンス・セキュリティ・管理性・安定性にビジネス上のメリットをもたらす設計です。
こちらはCPUの性能を測るCPU Markスコアです。
スコアの目安
- 5000~・web閲覧・動画視聴・Office資料作成があまりストレスなくできる
- 7000~・ビジネス用途でがっつり使ってもストレスを感じることはほぼ無い
- 10000~・ハイエンドPCに搭載される
- 15000~ゲーミングPCやワークステーションなど専門的な機種に搭載されることが多い
CPU Markスコア
オレンジ色・・・本機種 青・・・比較
Core i9-12900H | |
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Core i7-12700H | |
Ryzen 9 6900HS | |
Core i7-12800H | |
Ryzen 7 6800H | |
Core i5-12500H | |
Core i7-1280P | |
Ryzen 7 5800H | |
Core i7-11800H | |
Core i7-1270P | |
Core i7-1260P | |
Core i9-10855H | |
Core i7-1165G7 |
ノートパソコンで3万近いスコアは、考えられないほどですね。
次はCinebench R23のスコアで、CPUの3DCGレンダリング性能を測定します。一般的に、3Dレンダリングやエンコードはマルチコア、モデリングやCAD、編集中、ゲームはシングルコアを重視します。
マルチコアは8000を、シングルコアは1500を超えるとかなり高い性能です。
Cinebench R23 マルチコア
オレンジ色・・・本機種 青・・・比較
Core i7-12700H | |
---|---|
Core i9-12900H | |
Ryzen 9 5900HX | |
Ryzen 7 5800H | |
Core i9-11950H | |
Core i9-11900H | |
Core i7-11850H | |
Core i7-11800H | |
Ryzen 7 5800U | |
Ryzen 5 5600H | |
Core i7-1165G7 |
Cinebench R23 シングルコア
オレンジ色・・・本機種 青・・・比較
Core i9-12900H | |
---|---|
Core i7-12700H | |
Core i9-11950H | |
Core i9-11900H | |
Core i7-1185G7 | |
Core i7-11850H | |
Core i7-1165G7 | |
Core i7-11800H | |
Core i5-11500H | |
Core i5-1240P | |
Ryzen 9 5900HX | |
Ryzen 7 5800U |
グラフィックス
グラフィックボードは業務用で高度な技術計算(OpenGL)に最適化されたNVIDIA Aシリーズになり、ミドルクラスの性能です。旧名称はQuadroと言い、こちらの方がなじみがある名前だと思います。
RTX A2000 |
RTX A1000 |
||||
アーキテクチャ | Ampere | ||||
CUDAコア | 2560 | 2048 | |||
RTコア | 20 | 16 | |||
Tensorコア (TFLOPS) |
80 | 64 | |||
単精度性能 (TFLOPS) |
9.3 | 7.5 | |||
メモリタイプ | GDDR6 | ||||
メモリ帯域- | 192GB/秒 | 224GB/秒 | |||
メモリ容量 | 8GB | 4GB | |||
TGP | 60W | 60W |
NVIDIAによると、3Dアニメーションやモーショングラフィックスは、
・RTX A1000はローエンド
・A2000は中規模モデル
になっています。
ディスプレイ
解像度 | 光沢 | 液晶 | 輝度 |
FHD(1920×1080) | なし | IPS | 400ニト |
ディスプレイは標準的なFHD IPS液晶で、輝度は明るめの400ニトになります。
他のZBookはすべて、画面アスペクト比が16:10と縦に長いのですが、本機のみ16:9となっています。残念です。
メモリ
メモリはデータを一時的に保存する部分で、メモリが大きいと多くの(大きな)データを処理しやすくなります。
搭載メモリは最新のDDR5-4800MHzで、最大32GB(メモリ1枚)になります。
大きな筐体なのに拡張性もなく、ちょっと残念ですが、本機種であればメモリ32GBあれば足りるかなと思います。
ストレージ
ストレージはデータを保存するだけの場所じゃなく、パソコンの起動やWebサイトの表示速度にも影響があります。
搭載ストレージはM.2 SSDで、最大1TBと大容量です。パソコンの起動も、データ移動もサクサクです。
こちらはシーケンシャル速度の、おおよその速度です。
シーケンシャルリード
オレンジ色・・・リード 青・・・ライト
SSD | |
---|---|
HDD |
セキュリティ
世界で最も安全なPCメーカーであるHPの包括的なエンドポイントセキュリティで、HP Wolf Securityがプレインストールされています。
一部ですが、こういったセキュリティが施されています。
- HP Sure Sense・・・ディープラーニングを活用したリアルタイム検知機能があり、悪意のあるファイルを検出し、マルウェア、ゼロディ攻撃、ランサムウェアなどからPCを守るセキュリティ機能
- HP BIOSphere・・・ウイルスやマルウェアによる不正なBIOSの書き換えや、破損からシステムを保護
- HP Sure Click・・・Web閲覧のセキュリティ強化で、タブを閉じるだけでマルウェアが消滅する
- HP Sure Run・・・OSの重要な機能や設定を構成時の状態に維持し、万が一設定が無効になった場合は再起動し、安全な状態に戻す
- HP Sure Recover・・・OSがウイルス感染しても自動的にリカバリーする
- HP Sure Start・・・自動復旧機能で攻撃を受けても自動でリカバリーする
- HP Secure Erase・・・BIOSの中のSecure Eraseを使って内蔵ドライブのデータを完全に削除することが出来る
詳しくはこちらの公式サイトをどうぞ。
通信
対応周波数 | 速度 | |
IEEE802.11ax (Wi-Fi 6E) |
2.4/5/6GHz | 9.6Gbps |
次世代通信規格のWi-Fi 6Eに対応しており、現在主流のWi-Fi5より約40%最大通信速度が上がっています。また、一度に多くのデバイスに電波を飛ばせるようになったので、混雑した回線でも安定した通信が可能になっています。
Wi-Fi 6EはWi-Fi 6のExtended(エクステンディット)版で、6GHz帯(高速通信)での通信ができるのですが、執筆時現在の日本では6GHz帯はまだないので使えません。最大で5GHz帯になります。
有線は(100BASE-TX/100BASE-TX/1000BASE-Tの、ギガビットイーサネットです。
電源・バッテリー
バッテリーは6セル83Whrと大容量で、最大バッテリー駆動時間は約16時間になります。ワークステーションとしては、かなり長いですね。また、HP Fast Charge対応で、約30~45分で50%、約90分で90%の充電ができます。
電源は150Wで、大きくないですが小さすぎることもありません。
インターフェイス
左側面は、セキュリティロック、RJ45、USB-A、HDMI 2.0になります。
右側面はマイク/ヘッドフォンジャック、USB-Aが2つ、USB Type-C(Thunderbolt 4対応)、そして電源コネクタです。
USB-Aのデータ転送速度は5Gbpsで、Thunderbolt 4は40Gbpsになり、こういった機能・性能があります。
- Power delivery対応、DisplayPort出力機能付き、DC-in機能付き
- 最大データ転送速度40GB/秒が2mのケーブルでも出る(以前は0.8mまで)
- PCIeの転送速度は32GB、ストレージ転送速度は最大3000Mbps
- 4Kディスプレイ2台同時に出力可能
- 8K出力にも対応
サポート・保証
HPでは電話やチャット、LINE、Twitterでもサポートをしており、本機種の場合は3年間のオンサイト修理保証が付いています。
オンサイト修理とは、エンジニアが現場(会社や自宅)に来てくれて修理してくれるので、安心だし、早いですね。(修理は土日祝日を含む週7日対応)
ビジネスモデルのサポート受付時間は、月~金が朝9時から夜21時まで、土曜日が朝9時から夕方17時までとなっています。また、ワークステーション専用のテクニカルサポート部署が東京にあり、ベテランエンジニアが対応してくれます。
最長5年まで延長でき、サポートや保証が手厚いので助かりますね。
ライバル機種
ZBook Studio 16 G9
上位モデルのStudioで、メモリやSSDがより大容量になっています。GPUも上位モデルが選べ、ディスプレイは4K WQUXGAやOLED液晶もあり、HP Dreamcolor対応モデルもあります。
CPU | Core i7-12700H/12800H Core i9-12900H |
---|---|
メモリ | DDR5 最大64GB |
ストレージ | SSD 最大2TB |
グラフィックス | NVIDIA RTX A1000/A2000/A3000/A4500/A5500 NVIDIA GeForce RTX 3060/3070 Ti/3080 Ti |
ディスプレイ(16型) | WUXGA IPS/WQUXGA OLED 非光沢 タッチあり Dream Colorあり |
OS | Winodws 10 Pro(Windows 11 Proからのダウングレード) |
無線 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
生体認証 | 指紋センサー、顔認証 |
重さ | 約1.9㎏ |
電源 | 約200W |
価格 | 45.9万円~ |
ZBook Firefly 16 G9
16インチの大型機種で、据え置き用として合いそうな機種ですが、ワークステーションとしては下位モデルです。画面アスペクト比が16:10と縦に長く、17インチ並みの情報が表示されます。CPUとGPUは性能が下がりますが、メモリがより大きいです
CPU | Core i7-1255U Core i7-1265U |
---|---|
メモリ | DDR5 最大64GB |
ストレージ | SSD 最大2TB |
グラフィックス | NVIDIA T550 |
ディスプレイ(16型) | WUXGA 非光沢 1000nit |
OS | Windows 10 Pro(Winodws 11 Proからダウングレード) |
無線 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
生体認証 | 指紋センサー、顔認証 |
WEBカメラ | 500万画素、IRカメラ |
重さ | 約2㎏ |
バッテリー | 約6時間57分 |
価格 | 31万円~ |
まとめ
良い点
・コンパクトなボディ
・アルミニウム素材でおしゃれ・傷もつきにくい
・最新で高性能CPU搭載
・最新メモリ搭載
・Wi-Fi 6E対応
・RJ45あり
・セキュリティが堅牢
・バッテリー駆動時間が長い!
・指紋センサーと顔認証が搭載
残念な点
・拡張性がない
・画面アスペクト比が16:9
・Webカメラが低解像度
総合評価
全体的にミドルクラスのワークステーションで、中規模な3DデータやFHDの動画編集を扱う人に合うと思います。
メモリは若干小さめの最大32GB、ストレージもワークステーションとしては少ないので、大きなデータを扱う人は、上位モデルを選んだ方が良いと思います。ただし、簡単な3DCADやFHD動画編集がメインに人であれば、使いやすいと思います。
個人的にディスプレイのスペックがちょっと残念ですが、おそらく外付けモニターを使っての作業がほとんどだと思うので、その場合は気にならないと思います。
スペックに対して価格が割高ですが、HP Wolf SecurityというHP独自のセキュリティが搭載しており、情報漏洩などの一番気になる部分が堅牢なので、14年連続で日本でのワークステーションのシェアが1番になっていると思います。